とある配達員のバレンタインデー
(ボクも何か持ってくるべきだったかな?……いや、それじゃあ周りとあんまり変わらないしな…ご馳走様でした。さて、周りの女たちに牽制できて尚且つ特別感を出すもの……あ)
「ラップランド?どうかしたの……っ!」
いつもであれば、聞いてもいないのにベラベラ喋るはずのラップランドが、食べ終わったのにも関わらず黙っていることに疑問に思ったヤマトは、急に心配になり彼女の顔を覗きこもうとした時、急に胸ぐらを掴まれ引き寄せられた。
あまりにも突然であったのと、警戒が緩んでいたせいもあってヤマトはその動きに対応出来ず、何か攻撃がされる前に離れられるように彼女の肩を掴もうとして、その動きを中断された。
何故ならば──
「はんっ…んっ…」
「っ!?」
ラップランドがヤマトの首筋に顔を近づけ、そこを思いっきり噛み、そして舐め始めたからだ。
「んっ、な、何を…?」
「ん、思った以上に君の血は美味しいね……病みつきになりそうだよ…って、危ない危ない。本命の方やらなきゃね」
「?何を言って…っ!うっ…」
ラップランドは恍惚な顔で血が着いた自分の唇を舐め、ヤマトが状況を正確に把握する前に再度ヤマトの首筋に顔を埋め、今度は音がなるほど強く吸う。
吸われたヤマトは初めて感じる感覚に戸惑い、そして腕に力が入れられなくなりろくな抵抗が出来ずラップランドにされるがままになる。
「ふぅ…うん、うまくついたね」
「はぁ…はぁ…?」
10秒、1分、またはそれ以上だったのか逆にそれより短かったのか、どれほどの時間そうしていたのか、2人にとって時間は曖昧であった。しかし、ラップランドはヤマトの首筋にしっかりと赤い痕が付いているのを確認して、満足そうに頷いていた。
「それじゃあ、ボクはそろそろ行くとするよ……ホワイトデーのお返し、楽しみにしてるからね?」
(……え、俺何か貰ったっけ?)
機嫌良さげに龍門の夜の闇に消えていくラップランドを見ながら、ヤマトはそんなことを考えたが、「まあ、ホワイトデーに何か作って返せばいいか」と自分を納得させ、首筋に赤い痕が付いているのに気づかずそのまま寮へと帰っていった。
****
次の日、ヤマトは首を隠さずに起きてきたせいで、鬼気迫る雰囲気のテキサス達から逃げるために龍門を駆け回る羽目になったのだった。
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