喧騒の夜に紛れる狼(上)
龍門の安魂夜が行われている日の夜。
裏路地のとあるバーに、身の丈ほどあろうアタッシュケースを持った1人のループスの少年が入ってきた。
「どうした坊主。本来なら、回れ右してママのところに帰って欲しいが、不幸なことに客が全く居ねーからな。好きなとこに行ってくれや」
「……………」
客がいないバーのバーテンダーと思しき男性がかけた言葉を無視して、少年はバーテンダーに小声である言葉を発した。
それを聞いたバーテンダーはため息を吐きながら呆れ気味に目の前の少年に言葉を投げかけた。
「……客が居ねーのにわざわざ言うなんて、相変わらず律儀なやつだな」
「そういうルールだろう」
「ったくこっちは気を利かせてそのまま直行していいように、遠回しに言ってやったのによん…ほら、行きな」
少年は彼に軽く会釈をすると「staff only」という文字が書かれたドアを開けて中に入ると、迷うことなくその部屋にある本棚の丁度1冊だけ入りそう隙間がある所に、懐から出した赤い本を入れた。
すると、本棚が1人でに動き出しその裏から金属製のドアが姿を現した。
少年がそのドアをなんてことがないように独特なリズムで叩くと、鍵が開くような音がしそれを確認すると少年はドアを開けて中に入った。
「やあ、久しぶりだね。ヤマト少年」
中に入ると、そこには様々な機材や武器を研ぐための砥石、そして色んな武器が所狭しと置かれており、作業台と思われる机の近くには1人の角が生えたサンクタ人の女性がいた。
その彼女が入ってきたヤマトにヒラヒラと手を振って挨拶をしたのに対し、ヤマトは無言でアタッシュケースを彼女の前に置いた。
「こいつの点検・修理を頼む」
「おおう…少しはお姉さんの話を聞いてくれてもいいんじゃない?……ふむ、確かにこの具合だと私じゃないと厳しいね。あ、てか、よく私がこっちに来てるって分かったね?」
「………たまたまそう聞いたからだ」
「うーん、素っ気ないなぁ…そのコミュ障ぶり早く治しなってあれほど…てか、私にはそろそろ心開いて欲しいんだけど?」
その女性は、ヤマトに対し色々言いながらも慣れた手つきでアタッシュケースの中にあった合体剣をバラして、一つ一つの不調な、またはもうすぐそうなりそうな箇所に手を加えていく。
彼女の話を聞きながら、ヤマトはふと思い出したように声をかけた。
「…そういえば、ここに来るまで何か騒がしかったが何かあったのか」
「ん?ああ、なんかシラクーザのマフィアとペンギン急便がドンパチやってるってh「本当か!?」おう!?」
女性の答えにヤマトは食いつき気味な反応を示し、それを見た彼女は驚いたように声を上げる。
「凄い食い付きだねぇ〜。もしかして、どっちかに因縁でも…そんな熱い視線向けられるとお姉さん困るんだけどな〜。まあ、理由教えてくれたら教えてあげるよ?」
「……ペンギン急便に、大事な人がいるんだ」
ヤマトがどこか優しさを含んだ顔で答えた内容に女性は、少し間を置いて声をかけた。
「………そっか。もう一つだけ聞くけどさ、さっきの話が本当ならヤマトはどうするの?」
「出来る範囲で助太刀する」
「はあー…、この剣は整備の途中だから使えないのにどうすんの?」
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