ハーメルン
【朗報】修羅場系パーティーに入った俺♀だったが、勇者とフラグの立たない男友達ポジションに落ち着く
11話「猿仮面、大地に立つ」
事の始まりは、数時間前に遡る。
「お父様は、未だ行方知れずなのね?」
「はい。恐らくは、他の街へ遠征しているものと思われます」
風俗店関連の元締め、レーウィンの『旅人の守護者』テンドー家のサクラは戦力集めに奔走していた。
「困ったわね~。お父様の親衛隊が居なければ、戦力半減よ」
「まさか、奴らが停戦するとは思いませんでした。何があったのでしょうか」
「水と油みたいにいがみ合ってたのにねぇ」
その理由はテンドー家と敵対している2勢力が和解し、停戦してしまったからだ。となれば、次に狙われるのは自分達であることは想像に難くない。
ただでさえ今は、当主たる父親が短気を起こして出征してしまっており、戦力不足の状態なのだ。
「手あたり次第、冒険者に声をかけるわよ。一人でも多くの協力を得るの、それしかないわ」
「ヘイ、お嬢」
テンドー家は、旅人を大事にする。それは、彼らの上客が『風俗目当てでやってきた冒険者』であるからに他ならない。
そう父に教えられていたサクラは、普段から出来るだけの事をして旅人を優遇していた。その成果は、こういった事態に備えての事だ。
「確か、ヴェルムンドという貴族の旅人がいたはず。その娘、冒険者やってるくらいだから攻撃魔法が使える可能性が高いわ」
「ほお、それは頼もしい」
「何としても、その娘を抱き込むわよ。金欠らしいし、資金援助と引き換えにすれば交渉くらいは出来る筈」
サクラは、平民の詐欺師に騙されているだろう貴族令嬢を思い出していた。名前は確か、イリーネと言ったか。
冒険者に良い様に騙されているあたり頭は悪そうだが、フォン・ヴェルムンド家と言えばそこそこ有力貴族だ。サクラの記憶では数代前に戦功を挙げて貴族の爵位を得た家の筈。
つまり、ヴェルムンドは武家の一族。ならばイリーネも戦闘用の魔法を使える可能性が高い。
ついでに、彼女を騙してるっぽい冒険者も抱き込めれば万々歳だ。
「今から彼女が宿泊している宿へ向かいましょう。幸いにも私は今朝、彼女に恩を売れてるし。交渉の余地は十分にある筈だわ」
「おうとも」
そんなこんなで、イリーネ・フォン・ヴェルムンドに抗争の助力を乞おうと彼女の滞在する宿に向かったはいいのだが……。
「イリーネなら居ませんよ。あの娘も、情報収集に出て貰っていますし」
「あら、そうですか」
「それに申し訳ないですけど、私達は長期の依頼を受けることになってます。レヴ達の件は感謝していますけど、貴女の力にはなれません」
残念ながら、肝心のイリーネは不在だった。おまけに、彼女を擁している詐欺グループの女には取り付く島もなく助力を断られてしまった。
詐欺師だと思って、冷たくしてしまったのが仇になったらしい。
「こうなれば、彼女本人に直訴しなくては。貴族が一人いるかどうかで、戦力は段違いだし」
しかし、こんな事で諦められるほどサクラに余裕はない。何としても、戦力をかき集めて決戦に備える必要がある。
「……宴会を。イリーネ嬢が情報収集をしているというなら、酒屋に居る可能性が高いですわ。適当な酒場を貸し切って、私のおごりだからと冒険者を集めなさい」
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