ハーメルン
【朗報】修羅場系パーティーに入った俺♀だったが、勇者とフラグの立たない男友達ポジションに落ち着く
13話「死亡フラグなんざへし折ってやるぜ! と言うのも死亡フラグ」
全身の細胞が、
警告
(
アラート
)
を鳴らしているのが分かった。
俺は本能で理解した。その化け物と、正面から戦ってはいけない事を。
「よくも、お嬢を────」
だから、これは反射的な行動だった。
何かを考えたわけではない。何かを見て動いたわけではない。
ただ、気付けば恐怖に駆られて。俺はマスターを脇に抱え、全力で真横にかっ飛んだのだった。
あんな生物があるか。
その巨体は、象なんかとは比べ物にならない。
肉付きは、4足歩行の獣。だが顔面は類人猿で、全身に浅黒い体毛を生やし、腹に爬虫類の様な鱗も備えている。
俺は前世から今世を通じて、アレに該当するような生物を見たことがない。
「マスター、無事か」
「俺、は……?」
ジュウ、と肩がひりつくように痛む。
ヒゲ面のオッサンを抱きかかえ跳んだからか、結構肉が抉れてしまった。廃墟と化したアジトから数十メートル連なり、地面に血痕が滲む。
咄嗟の事で、結構擦ってしまったらしい。見れば肩から、ダラダラと血が滲んでいた。
「起き上がるぞ、マスター。お前は早く逃げろ」
「な、何がどうなっている。猿、俺は何でこんなところに倒れている?」
「庇ってやったんだよ、見ろ俺達がいた場所を」
だが、そんな軽傷を気にしている場合ではない。俺達は今、命の危機なのだ。
周囲に獣の気配が無いか用心深く立ち上がり、俺は先程まで立っていた場所を睨みつける。
「上級魔法でもぶっ放したような、大きい穴が開いてやがるじゃねぇか」
そこに、奴は居た。大地に空いた大穴の中心に、その化け物は佇んでいた。
毛むくじゃらのソレは両手の拳を何度も地面に叩きつけ、そこに死体がないことに首をかしげていた。
少しでも反応が遅れたら、俺達はあそこで潰れた水風船のように血を撒き散らして死んでいただろう。
「何だよ、ありゃあ……」
「何でもいいよ」
その呆けたようなマスターの呟きに反応し、化け物は再び俺達の方を見る。
『そこか』とでも言いたげに、奴はニタリと微笑んだ。それは身の毛のよだつ、獰猛な笑みだった。
「マスターは逃げろ。アンタ庇いながら戦える相手じゃなさそうだ」
さて、どうしたらいいのか。何をするのが正解なのか。
俺はあの化け物を倒すことが出来るのか。なりふり構わず逃げることに全力を出した方が利口なのか。
何も、分からないけれど。
「……
平民
(
マスター
)
が逃げる時間くらいは、稼がねぇとな」
ノブレス・オブリージュ。貴族の高貴な地位は、その覚悟によって賄われる。
コイツを放置していたら、とんでもない被害が出るのは明白だ。なら、俺は『貴族』としてこの化け物と相対せねばならない。
……まだ確認できていないが、俺の
知り合い
(
サクラ
)
の仇の可能性が高いし。
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