ハーメルン
郡千景と粘着質な愛の話
僕とどうしようもない話

 すぐネガティブな思考に陥って、馬鹿みたいに震えるだけになるなんてカッコ悪いにも程がある。

「千景は負けない。何があっても、千景だけは負ける筈が無い」

 そうだ。千景が負けるだなんて、そんなふざけた事を一瞬でも考えた自分が恥ずかしい。冗談でも性質が悪すぎる。
 付き合ってるんだろ?
 彼氏なんだろ?
 だったら彼女を信じなくてどうするんだよ。
 でも。
 でも────

「……僕は、勝てる?」

 他の誰が勝てても、僕は勝てないんじゃないのか。
 最初ステージ1だった天恐は、去年ステージ2に悪化した。いくら薬で抑え込んでも、ただそこにあるだけの「空」が怖い。
 皆が前に進んでいるのに、僕は後退していた。

「……僕は、勝てない?」

 神樹様が健在の限りバーテックスが降ってくるなんて有り得ないのに、想像するだけで吐きそうになる。
 父さんや母さんがそうだったように、千景も食い殺されるんじゃないのか。
 想像するだけで怖気が走った。
 千景が、アイツらに。
 母さんみたいに、内臓をぶちまけて──?

「……僕は、負ける?」

 僕だけ千景を信じられない?
「あなたがいるなら負けない」って、千景は言った。確かに言った。
 言ったのに、なんで僕は信じられないんだ。
 どうして。おかしい。そんな筈は無い。
 そんなの僕じゃない。僕は千景を信じられる。()()()()()()()()()。そうじゃなかったら僕が此処にいる意味が無い。

「僕じゃない……!こんなの僕じゃない……!」

 気が付けば薬瓶を手に取っていた。
 薬があれば、すぐに落ち着く。
 普段の僕に戻れる。千景を信じられる自分に戻れるんだ。
 なのに、なのに────

「ち、畜生……!こんな時に……!」

 手の震えが止まらない。
 上手く力が入らなくて、瓶の蓋すら開けられない。畜生。なんで肝心な時に僕の体はマトモに動かないんだ。
 どれだけ自分を詰っても、蓋を上手く開けられない。それどころか瓶そのものを取り落としてしまう。

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