ハーメルン
郡千景と粘着質な愛の話
僕とどうしようもない話

 だけど、僕にも意地がある。出来る事なんて殆ど無いと思うけど、何もせずに見ているだけなのは嫌だ。

「諏訪の勇者と力を合わせればバーテックスも殲滅出来るって大社の人から聞いたんだ。そしたらこの狭っ苦しい四国から出て、何処へでも好きな所に行けるようになる。千景がアイツら(両親)に縛られる必要も無くなる。そうだよな?」

「──」

「つまり後もうちょっとじゃないか!だったら僕がへばる訳にはいかないだろ。頼むから、支えさせてくれよ──!」

 何も出来ないのは、3年前を思い出すから嫌だ。
 千景が虐められている時も、バーテックスが襲ってきた時も僕はずっと無力だった。ただ逃げ惑って、震えているだけだった。
 だから、「ただそこにいる」のが堪らなく怖い。

 そしてそれ以上に、千景に何もしてやれないのがもっと怖い。
 ずっと痛みに耐えていた。生まれてからずっと誰にも愛されていなかった。
 もう一生分苦しんだのに、まだ勇者の過酷な使命に耐え続けている。
 それを見ていて、否定しようとして、なのに何も出来ないのが何より許せない。

「それとも、千景は僕を信じられないの……?」

「いいえ、それだけは有り得ない」

 即答だった。一瞬の迷いすらなかった。だけど千景は泣きそうな表情をしていて、深い諦感を茶色の瞳に浮かべていた。
 ……何でだ。やっと勝ち目が見えてきたのに、どうしてそんな顔を──

「──けど、けどもう無意味なの。私達の戦いは全部無駄だったの」








「────諏訪は壊滅したわ」

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