ハーメルン
銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)
6. 関係性の話
俺と銀子ちゃんズの共同生活が始まってから、今日で4日目となった。
その間俺はずっとこの部屋に泊まっている。当然4人の銀子ちゃん達も一緒だ。
だがそうなると、この4日間俺は一度も自宅には帰っていないという事になる。そしてその事情を説明する電話の一本すらもいれていない。
4日間も音信不通で連絡無し。となれば俺の家に居る内弟子のあいだって心配するだろう。
そしてついでに言ってしまうと、あいとは別のもう一人の弟子の方、週に2回ある天衣への将棋の指導もこの4日間の内にすっぽかしている。
となれば当然向こうから俺に対する何らかのアクションがあって然るべきなのだが、しかしこの生活が始まってから俺のスマホは一度も着信音を鳴らしはしない。勿論故障しているわけじゃないよ?
それは何故か。答えは簡単、これが夢だから。
俺達が寝泊まりしているこの部屋。この部屋はもう俺の知っている801号室ではなくて『銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの部屋』なのだ。
この部屋で俺がすべき事は銀子ちゃんを可愛い可愛いするだけ。それがこの部屋、ひいてはこの夢の目的であって、だからこそ壊れている訳でもない俺のスマホは着信音を鳴らしはしないのだろう。
という事で、俺は早々にこの日々を夢だと断じている為、銀子ちゃんに関わる以外の事については手を出す事を止めにした。
それが現状の俺のスタンスであり、だからこそちょっと不思議に感じてしまうのだが──
「……ほら、ハンカチとティッシュは持ったの?」
「うん、持った」
時刻は朝。JC銀子ちゃんの言葉にJS銀子ちゃんが素直に頷く。
基本的に銀子ちゃんとは自分が認めた相手以外に世話を焼かれるのを嫌う生き物なのだが、さすがにその相手が自分自身とあっては無闇に反発する事はないらしい。
そしてそれは銀子ちゃんズ共通の考え方(同一人間なのだから当たり前だ)な為、同じ部屋に自分が四人居る状況でも無用な対立が生まれたりはしなかった。この数日間でそんな事も分かってきた。
「仕度は出来たわね。それじゃあ行くわよ。……八一、鍵閉めて」
「はいよー。気を付けていってらっしゃーい、銀子ちゃんたちー」
そしてJK銀子ちゃんが玄関ドアを開けて、そんな彼女達に俺は片手を振って応える。
そのすぐ隣では幼女銀子ちゃんもちっちゃなおててをふりふりしていた。可愛い。
そう。意外と言うか何と言うか……銀子ちゃん達は朝になったら学校に登校するのだ。
いやまぁ彼女達は学生なのだから学校に行くのが当たり前なのかもしれないが、それにしたってわざわざ夢の中でまで……と感じてしまうのは俺の感覚が間違っているのだろうか。
とにかくそんな訳で、学生の身分である銀子ちゃん達は毎朝8時前には登校していく。
すると室内に残るのは学生の身分を持たない者、つまり俺と幼女銀子ちゃんの二人。
今から学生達が帰宅する昼過ぎまで、俺とこの子はこの部屋で二人っきりなのだ。……ごくり。
まぁ幼女銀子ちゃんは4歳だしね。一人きりでお留守番などさせてはいけないよね。
ちゃんと大人が面倒を見なければ。俺は幼女を警戒させないようにっこり笑顔を作って。
「それじゃあ幼女銀子ちゃん、対局しよっか」
「や」
そっこーでフラれた。辛いっす……。
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