ハーメルン
銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)
8, JCとJKの話
「……それで、話ってなに? 寒いから早くして欲しいんだけど」
高校生の私が二の腕を擦りながらそう口を開く。
その言葉通り12月の夜は確かに寒い。部屋着の上に温かい上着が必要になる程の気温だ。
けれどもこの部屋はワンルームしかなくて、内緒話が出来そうな場所と言ったらここぐらいしか無いんだからしょうがないじゃないの。
「話っていうのは……」
「うん」
「……その」
……これ聞くの、自分相手でも恥ずかしい。
いや、あるいはもしかしたら……自分相手の方が羞恥度は上かもしれない。
だって目の前には私が、私とほぼ変わらないような顔があって、その口からそういう話題を聞くというのは……うぅ。
「……聞きたいのは……私と八一の関係の事?」
するとまごつく私の様子を見てか、高校生の私……というかJK銀子が助け船を出してくれた。
きっとこの私が先程の話だけじゃ納得できず、こうして詳しい事を尋ねてくると内心分かっていたのだろう。なんせ自分自身の事だし。
私にとってもJK銀子とは自分自身だ。それなのに年齢の違いのせいで私の知らない事を高校生の私だけが知っているというのが癪なのだが……今はそんな事に拗ねていても仕方がない。
「……そうよ。私が聞きたいのはさっきの話」
こちらから呼び出しておいて躊躇うのはさすがに情けないので、私は覚悟を決めた。
「率直に聞きたいんだけど……さっき話していた事は本当の事なの?」
「……えぇ、本当よ。私は八一と付き合ってる」
「んひゃぁ……!」
なんか口から勝手に変な声が出た。
「ほ、ほんとに!? ほんとにほんとなの!?」
「だから本当だって言ってるじゃない」
──ほんとに、本当、なんだ……。
顔が一気にグツグツと熱くなってくる。頭の中がぽーっとしてくる。
や、八一が、あの八一がわたしの恋人……か、か、かぇち、八一が私のかぇち……かぇち……。
「まぁ信じられないのも分かるけど。私も色々……そう、色々あったのよ」
「………………」
「……ちょっと、聞いてるの?」
「──はっ! じゃ、じゃあどっちから!?」
ふと我に返った私は、せっつくような勢いで次なる質問をする。
付き合うというならこれだけは聞いておきたい。どっちから? どっちからなの!?
「どっちって何が」
「だから、どっちから告白したの!?」
「えぇ!? それ、は……それは、秘密」
そう言ってJK銀子は私から視線を背ける。
「どうしてよ! 別にそれぐらい教えてくれたっていいでしょ!?」
「えぇ~、だって……そういう事はあんまり人に教えるものじゃないっていうか……」
「同じ自分なんだから良いじゃない! ケチケチしないでよ!」
私が声を荒げる一方、JK銀子は「え~」とか「でもぉ~」とか、否定の言葉を繰り返す。
……が、その雰囲気からは何て言うのか……あんまり拒絶の意思が伝わってこない。
……というかこいつ、本当は言いたい気満々なのにさりとて自分から言うのは恥ずかしいから、私があまりに食い下がってくるから仕方無くよ? みたいな体裁を作りたいだけなのでは……。
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