ハーメルン
銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)
9. おしごとの話


 そんな八つ当たりをしてから、二人の将棋を邪魔しないよう私は洗面所へと向かって。
 どうにも気持ちの置き場に困り、特に理由もなく洗面台で両手をバシャバシャと洗う。

「全く中学生のくせに……。ぇ、えっちな事、なんて、中学生が気にする事じゃないでしょ……」

 えっちな事なんて中学生にはまだ早い。最低でもあと1年と半年ぐらいは早い。
 というか……私が中学生だった頃ってそういう事に興味を持っていたかな? ううん、そんな事気にしてこなかったと思うんだけど……。
 もしかしてあのJC銀子は私が中学生だった頃よりも幾分かスれているのではないか。自分自身の事だけについそんな考えを抱いてしまう。

 ……けどまぁ、それはそれとして。それでも年齢相応に中学生らしい所もあったけどね。
 どっちから告白したとか、どんな告白だとか。そんな事を私が言う度にテンパって、JC銀子の顔はもう終始真っ赤で……。
 私は自分の事を無愛想な人間だと思っていたが、ああいう姿を見ちゃうと少し見方も変わってくるっていうか……まぁ言っても中学生だしね、色々と未熟な面が多いという事なのだろう。

 それにJC銀子のああいう姿を見ると、正直な所ちょっとだけ優越感を抱いてしまう。
 告白やキスで真っ赤になるこの頃と比べて、高校生の私は成長してるなぁと感じるのだ。
 まぁさっきはなんていうか? 全体的に見て高校生の余裕っていうか、彼氏持ちの余裕? みたいなものは示せていたのではないかと思う。

 ──そう。私は彼氏持ちの高校生、空銀子。
 私にはもう恋人がいるのだ。九頭竜八一という……さ、しゃ、しゃいあい! ……の人が。
 幼女や小学生や中学生じゃない、高校生だからこそ、私は八一と想いを交わし合っているのだ。

 そして、彼氏持ちであるが故に……私には彼女としての役目がある。
 八一にりゅうおうのおしごとがあるように、私にはりゅうおうの彼女のおしごとがあるのだ。
 それはとてもとても大事なもので、一日たりとも投げ出す事なんて許されない。

 ──そう、許されない、んだけど……。
 そんな私だけのおしごとに関して、ここ最近はちょっとした問題が発生している。

 それは言うまでもなくこの状況だ。八一と私達4人での共同生活を送っている今、中々そのおしごとを果たすべきタイミングが見つからない。
 だって他の私達が居る中で八一と恋人らしい事なんて出来ないし……けれどこの部屋はワンルームだからプライベートなんて無いに等しいし……。

 この狭い部屋で暮らす今、どうやって八一と二人きりになるか。恋人同士の時間を作るか。
 それはこの共同生活が始まった初日からずっと、私と八一が共に長考してきた問題で。

 そうして昨日、私達は一つの答えを見つけた。
 ……あ、ちなみに言っておくけど、これはあくまで八一から言い出した事なんだからね?

 まず前提として、基本的にこの部屋では幼女の私を中心にタイムスケジュールが回っている。
 食事などもそうなんだけど、特に大事なのは就寝の時間だ。4歳児が眠っているのに照明を点灯していたり、将棋の駒音を鳴らすのも忍びないので、あの子が「寝る」と言って布団に入ったら自然と私達も就寝する流れになった。

 だが幼女の私が眠るのは夜9時とかそこらで、高校生の私や八一にとっては些か早い時間だ。

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