ハーメルン
銀子ちゃんを可愛い可愛い×5するだけの話(+短編集)
短編 全肯定空銀子
「うん」
「でも、女性との会話はどうかしら。それは必ずしも必要とは言えないんじゃない?」
……うん? どういうことだろう?
女性と会話するのは、必ずしも必要では……無い、の、かな?
「だってほら、今より一昔前だと将棋って完全に男の世界だったわけでしょ?」
「あぁ、確かに。そう言われてみれば、そうかも」
「ね?」
銀子ちゃんの言う通り、今より一昔前だと将棋というのはほぼ完全に男の世界だった。
その当時の棋士で、仮に生涯独身だったとしたら女性とは全く会話する機会が無かった人だっていただろう。それでも棋士として成り立っていたのだから、棋士にとって女性との会話は必ずしも必要なものでは無いと言える。
「だったら、禁止しても問題ないんじゃないかなって」
「禁止……」
「その代わりに私は小学生男子の弟子は絶対に取らないから。それなら平等でしょ?」
確かに。それなら平等だ。
「私に償う気持ち、あるのよね?」
「ある!」
「だったら、どうすればいいのか分かるよね?」
囁くように、甘い。銀子ちゃんの甘い甘い声がすぐ耳元から聞こえてくる。
その甘さが俺の脳を完全に溶かしきるまでもなく、もうすでに結論は出ていた。
「分かった、分かったよ、銀子ちゃん!!」
「分かった?」
「うん! 俺もう金輪際、銀子ちゃん以外の女性とは一切会話しない!!」
俺は顔を上げてそう宣言した。
するとそこには、全てを蕩けさせる銀子ちゃんの花咲くような笑顔があった。
「正解♡ 良く出来ました、分かってくれて嬉しいな♡」
そして銀子ちゃんの手が。俺の頭を抱えたままヨシヨシと愛でるように撫でてくれた。
あぁ、やさしいやさしい……慈愛の女神……大好き……。
「ふふっ、八一はとってもいい子だね、大好きだよ♡」
「うぅ……俺も、俺も大好きだよぉ、銀子ちゃあん……!」
あぁ良かった。間違ってばっかりだった俺でも正解を選べたんだ。
もうそれだけで十分だ。俺は俺だけの全肯定銀子ちゃんをぎゅっと抱き締めた。
こうして──俺と銀子ちゃんの間で浮気のラインが決定した。
二度と銀子ちゃんを苦しめたりしないように、今後は銀子ちゃん以外の女性とは一切会話しない。
この日、俺はそう心に固く誓ったのだった。
……そして後日、この日の会話を思い出して。
あぁ銀子ちゃんは最初から本気だったんだなぁと、その言葉の真意を知るのだった。
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