第11話【付呪】
エヴァンジェリンがふて寝してから半日ほど経過した後、ようやく彼女は現実を受け止めてベッドから這い出てきた。
その間、千雨は石造りの床の上でぺたんと足を開いて正座に近い体勢で座りながら目を閉じて瞑想を続けていた。
長時間同じ体勢で居続けるのは常人にはつらいものがあるが、丸一日同じ体勢で居ても平気な程度には千雨の肉体は頑丈である。
瞑想中は常に言葉の意味を考え続けているため実際には起きているようなものだが、千雨はこの手の集中力を要する作業は得意としている。
さすがに瞑想には使用できないが、睡眠時間は『過程の省略』を使えば短縮できるので、やろうと思えば24時間ずっと活動することもできる。
あまりにも常人から離れすぎた行動ばかりしていると感覚が狂うため普段はしないが、アルドゥインとの初めての戦いの後に睡眠時間すら惜しんで取り憑かれたかのように修行漬けの日々を送っていた時期があった。
最終的に仲間や知人に説得されたため無茶をしないようになったが、あの当時の千雨はかなり思い詰めていたのだ。
乱れた髪を茶々丸とメイド人形たちに整えさせたエヴァンジェリンは一言、ついてこいとだけ千雨に告げて模擬戦を行っていた塔の屋上へと上っていく。
夜空に浮かぶ月に照らされた屋上についたエヴァンジェリンは屋上の縁に立つと、右手の手のひらを差し出しながら千雨に語りかけた。
「魔力を消費せずに魔法が扱えるようになるアーティファクトの真贋、この私が見極めてやろうではないか」
「さっきまでショックで寝込んでた奴がよく言うぜ」
「いいからさっさと貸してみろ!」
呆れながらも千雨がインベントリから取り出した金にダイヤモンドがあしらわれたネックレスと指輪、サークレットの3つをやや乱暴に受け取ったエヴァンジェリンは、それらのアクセサリーをすぐさま身につけた。
千雨の頭のサイズに合わせているため少し大きかったのか、ずり落ちそうになったサークレットを慌てて左手で押さえながら、エヴァンジェリンは右手を海に向かって突き出し魔法の詠唱を始める。
「契約に従い、我に従え、氷の女王。
来れ、とこしえのやみ、えいえんのひょうが。
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