第19話【関西呪術協会】
図書館島の探索から数日後、刹那は登校中の生徒たちの人並みに紛れて、明日菜や千雨と共に学校に向かっている木乃香に見つからないようにしながら、彼女の身の回りに不審な人物が近づかないか監視していた。
麻帆良には学園結界と呼ばれる妖魔や悪意の持ち主を探知する広域結界が存在するため、そう簡単に木乃香を狙う不届き者が入り込めはしない。
もっとも学園結界には侵入者を探知する機能はあっても排除する機能はないため、対処するには人の手が必要となる。
だからこそ、刹那は自分にできる範囲で木乃香を守ろうとしているのだが、彼女はここ数日の自分の行動に意味があるのか疑念を覚えていた。
(私はお嬢様を守るために、この身を剣に捧げてきた。それが間違いだったとは思わないが……私は本当にお嬢様を守れているのだろうか)
先日、無意識に剣気を放ってしまった一件以降、木乃香を遠巻きに護衛している刹那を千雨が時折見つめ返してくるようになった。
殺気も敵意も感じられない冷たい眼差しは、お前を見ているという脅しだろうか。それとも、お前など眼中にないという意思表示だろうか。
冷静に立ち回っているつもりでも、なぜか千雨に居場所を毎回割り出されてしまうが、刹那は己の行動を改められずにいた。
幼少期に溺れている木乃香を助けられなかったという経験から、刹那はお嬢様を守らなければならないという強迫観念に駆られているのだ。
(やはり千雨さんは東の長が手配した護衛なのか? それなら一人だけ経歴に差異があるのも納得だが、どうして私には何も知らされていないんだ)
生真面目すぎる刹那は数日に渡って考えた末に、千雨は不穏分子ではなく木乃香の護衛ではないかという考えに行き着いた。
関西呪術協会は関東魔法協会に遺恨があるため、長同士はともかく呪術協会の一部の構成員たちは魔法協会と西洋魔術師を蛇蝎のごとく嫌っている。
輸送される過程で検閲される可能性もあるため、欺瞞のために護衛の情報だけ書き換えていた可能性は否定できなかった。
クラス内での会話を聞くところによると、かの有名な闇の福音として知られているエヴァンジェリンと千雨は個人的な繋がりがあるようで、物の貸し借りをするほどの仲だという。
その証拠に、昨日はエヴァンジェリンがメイド服マニアだという噂がクラス内に広まって、こっそりと席から立ち去って逃げようとしていた千雨の頭を両手で鷲掴みにしながらじゃれあっていた。
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