第2話【生命探知】
褐色の肌と灰色の髪が特徴的な異国情緒溢れる少女──ザジ・レイニーデイは千雨の存在の大きさが様変わりしていることに気がついていた。
とはいえザジは元より口数が少なく、以前の千雨も人見知りだったため軽い自己紹介と挨拶しかしていない間柄である。
ザジは数秒ほど首を傾げていたものの、大きさはともかく性質は変わっていないため同一人物だと納得したのか、頭の上に乗せていた黄色い小鳥を室内用の止り木に移動させると自分の荷物の整理を始めた。
「その、なんだ……手伝おうか?」
麻帆良市内に実家があり両親に荷解きを手伝ってもらっていた千雨とは違い、ザジは海外からの留学生だったため、いくつかの荷物は段ボールに梱包されたままだった。
千雨は以前の自分があまり社交的な性格ではなかったと自覚している。
今でこそスカイリムで善悪問わず様々な人間(人外や神を含む)と関わった経験があるので、初対面の相手であろうと臆せず接することができるが、社交的かと言われると微妙なところである。
どうせ明日の入学式を終えたら土日を挟むので荷解きを手伝わなくとも問題はない。
本来は隔週で第1、第3土曜日も授業があるのだが、寮に入る生徒のために今回は特別に休みとしている。
しかし、これから一緒の部屋で三年間を過ごす相手を放置してパソコンを触っていられるほど千雨は無神経ではなかった。
千雨は言葉遣いこそあまり丁寧ではないが、頼まれ事をされたら、よっぽど気に食わないもの以外は引き受けていたぐらいにはお人好しなのだ。
千雨の問いかけにザジは少し悩んだ様子を見せたが、小さく頷いて提案を受け入れることにした。
実はザジにはとある秘密があるのだが、他人に見られて困るようなものは持ち込んでいないため素直に好意に甘えることにしたのだ。
その後、ほとんど口を開かないで身振り手振りでやり取りするザジに少し戸惑いながらも1時間ほどで荷物整理を終えた千雨は、夕飯を食べるために学生食堂に向かうことにした。
千雨がこの春から引っ越してきた中等部学生寮は麻帆良学園本校女子中等部に通う生徒のための寮だ。
集団生活を好んでいなかった千雨は二人部屋(本当は一人部屋にしたかったが無理だった)を希望したが、場合によっては三人部屋を割り当てられることもある。
6階建てで3階から上が寮になっており、隣接した3階建ての別棟には様々なテナント店や大浴場、地下1階には食堂などといった施設を完備している。
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