第6話【ドラゴンの血】
「高畑先生、今お時間よろしいですか」
「どうしたんだい? 千雨君」
なかなか雑談をやめないクラスメイトに悪戦苦闘しながらもホームルームを終わらせ教室を去ろうとしているタカミチに千雨は声をかけた。
タカミチラブな明日菜に、なんで高畑先生に話しかけてるんだ私も話そうとしてたんだぞという意思のこもった目つきで睨まれるが、気がついていないフリをしながら話を続ける。
「放課後、学園長とお話したいのですが大丈夫でしょうか」
「今日は職員会議もないし大丈夫なはずだよ。
僕の方から話は通しておくから、放課後になったら直接学園長室に向かうといい」
「お手数をおかけします」
片手を軽く振りながら教室を去るタカミチと見送りのために廊下まで出ていった明日菜を眺める千雨。
ありゃベタぼれだなと思いながら席に戻ろうとしている最中、木乃香に話しかけられた。
「おじーちゃんに用事でもあるん?」
「……おじいちゃん?」
「近右衛門おじーちゃんはウチの母方の祖父なんやえ」
「そうだったのか……これっぽっちも似てねーな」
「なんか言うた?」
「なんでもねーよ。ちょっと学園長に提出しないといけない書類があってな。直接渡したかったんだ」
「そうなんや。新学期早々に大変やねえ」
いかにも大和撫子然とした美少女の木乃香と、ぬらりひょんと仙人を悪魔合体させたみたいな見た目のジジイに血縁関係があるとか、生命の神秘ってすげーなと思う千雨であった。
驚きすぎてポツリと本音が漏れてしまったが木乃香には聞こえなかったようで、千雨は何事もなかったかのように会話を続けて誤魔化した。
「つーわけで、悪いが絡繰には少し待っててもらうことになるがいいか?」
「構いません。教室で待たせてもらいます」
「……どうせなら私の家に招待してやってもいいぞ」
ティッシュで鼻をかみながら気だるげな表情でエヴァンジェリンが千雨と茶々丸の会話に割り込んできた。
茶々丸は葉加瀬聡美と、中国からの留学生の片割れ──超鈴音の天才コンビにエヴァンジェリンが魔法技術を提供して作られたオーバーテクノロジーの塊である。
AIシステムの基礎こそMITの天才日本人兄妹から譲り受けているが、他の部分は全て麻帆良大学工学部で作り上げられている。
機体自体は今年の1月には完成していたので誕生日は2001年1月3日だが、起動したのは4月1日なので現時点では生後9日とも言える。
現在はエヴァンジェリンと交わした契約により彼女の従者となり、情操教育を兼ねて中学生として過ごしている。
「よろしいのですか、マスター?」
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