ハーメルン
【完結】ムゲンのかけら
Campion, “Time is Over”

 2体目のムゲンダイナ。
 出現と同時に、ユウリは全能感を感じた。
 以前までのムゲンダイナの在り様が壊れた蛇口のようなものだとしたら、磁石の同極が揃ったように指向性が生まれ、桁違いに遠く深く力が届くようになっている。
 時間跳躍には『2体のムゲンダイナが必要』。
 到底、達成不能なはずの条件が自然と揃っていた。
 マサルが何者か、ムゲンダイナとの関係は何なのか、疑問はあるが今はどうでもいい。
 頭は冷静に、次にするべきことを定めていた。
「ムゲンダイナ、私を乗せて!」
 降りてきたムゲンダイナに飛び乗ると、何人かがこの場所に侵入してきた。
 ユウリは懐かしい気配を気づいた。
「待てよ、ユウリ! 落ち着いて話をするぞ」
「ホップ、なんでここにっ……。そうか、オリーヴさんか」
 ホップの背後には、オリーヴ、マリィが続いていた。
 おそらくローズに危害を加えることを予想してブレーキ役を集めてきていたんだろう。
 そのタイミングには間に合っていないし、今更この二人を連れてきても、ユウリは止められない。
 努力の報われなさ、間の悪さに、ユウリはオリーヴに場違いながらも親近感を抱く。
 ホップはユウリの姿を見て、見覚えのある服装に気がついた。
「その服は……」
「ふふっ、私の服装を気にするなんて、やっぱりホップも成長しているんだね。ソニアさんの影響かな。……私とホップが旅立つときに着ていた服だよ」
「そんな恰好して何をする気なんだよ」
「ホップには関係ないことだよ。もう、遅いよ……」
「うっ」
 ホップがアーマーガアを嗾けようとする気配を読んで、ムゲンダイナの動きでカウンターを入れて弾き飛ばした。ホップに巻き込まれて、一団の期先が制せられる。
 ムゲンダイナはその反動で、逃げるように上昇した。
 目指す先は、もう一体のムゲンダイナが現れた空間だ。
 そこが一番、『世界の境界』が薄くなっているのを感じる。
「ムゲンダイナ、私をあの日へ連れていって!」
 ユウリはそのためにこの服を纏っていた。思い出を一心に浮かべる。
 ムゲンダイナの力はユウリの意思の影響を受ける。
 今まではそれゆえに、体の成長をその『その時』に押しとどめていた。
 思いは届き『世界』の壁は再度溶け、深い過去へ、『その時』へと落ちていく。






「うわー……、これは判断ミスっちゃったな」
 マサルは自分のムゲンダイナのそばで消えるユウリを見上げていた。話したいことがあったのに、声をかける暇はなかった。
「やれやれ、本当に過去に向かってしまうとはね。もう一体のムゲンダイナとは全く、とんだダークホースもいたものだ。君は一体何者なんだね」
「前に名乗った通り、俺はマサルだよ。なんでこんな状況になっているかは、俺が聞きたいくらいさ。……キャンプしてただけのはずなのになあ」
 マサルはユウリがローズ目掛けて2発目を撃ちなおすことを警戒し、自分のいる場所に向かってきたので身構えていたが、そのまま頭上の空間へユウリは消えていってしまった。
「さて、ここにこうしているわけにはいかないし、帰らなくっちゃな」
 よっこらせ、という掛け声でムゲンダイナによじ登ったところで、ユウリを追いかけてきたマリィが追いついた。
「ねぇ、マサル! ユウリのムゲンダイナができたんならマサルも……や、やっぱりよかよ」

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