始まりの時
これはとある星にあった国の王様のお話である。
その星は知生体一人一人が特別な力を持っていた。そして、それ故にあまりにも長い間、統一されることもなく戦乱の時代を過ごしていた。一時的な平和が作られても決して長く続くことはなく、しばらくすればまた争い始める――――そんなどうしようもない未来しか想起できない星だった。
そんな争乱にまみれた星、その中にあったとある小国にある日、一人の王子様が生まれました。誰もが新たな戦力の誕生を喜び、その王子様が一体どんな能力をもっているのか、楽しみにしていました。そして、その王子様には皆の期待を応えて余りある力を秘めていました。
しかし。その王子様の精神性は、縛られる事を酷く嫌いました。眼下に広がる争いの火に酔っている者たちが何が楽しいのか、理解する事が出来ませんでした。自らの命を自分たちから取りこぼそうとするその姿勢が、彼には理解できなかったのです。
それも致し方なき事だったでしょう。何故なら、それはこの星を生み出した神の作り出した原則――――絶対法則だったのですから。この世界に生を受けたとはいえ、よその世界から流れてきた魂を持つ王子様には理解する事などできる筈もないのは、当然の理屈でしょう。
理解できぬまま日々を過ごしていた王子様。そんな王子様は戦争の最中にとある遺跡に立ち入った。そこには現在の神よりも以前に存在した先史文明と、神に至る方法と、現在の神よりも以前に存在した神々の記録が残されていた。
それを読み解いた王子様は決心した。この法則が残り続ける限り、如何なる知生体であろうとも真に自由を手に入れる事はないのだと。ならば、そのような法則など叩いて壊すのみと。
『星の王者のみが世界を塗り替える資格を持っているというなら、俺は世界を制しよう。
さぁ、聖戦の幕を開く。俺の願いを神が拒むというなら、そんな神は要らん。我が雷火に沈むがいい』
決心した王子様の行動は早かった。周辺国を圧倒的な速度で征服し、大国の名に相応しい領域まで格を上げた。普通ならば、何世代もかけて行うような大事を成し遂げたにも関わらず、王子様――――王様の進撃は止まる事を知らなかった。
まるで巨大な波のように、他の大国を平伏させていく。全ては生きとし生ける者の自由のために。その為ならば、彼が足を止める事はない。たとえ、彼がどうして自由を取り戻さんと思ったのかを忘れているとしても。
幸いにも、彼は保有していた圧倒的なカリスマによって征服した国々の民たちをまとめ上げた。彼の進撃は彼に心酔した者たちに支えられ、最後まで成し遂げられた。つまり――――彼は成し遂げたのだ。世界の総てを征服し、星の王者――――神の領域まで手を届かせる事が。
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