幕間・十二星神
新月の夜、空には星が満ちていた。その輝きを放つ総てが同じようでいて、まったく違う星の輝きを持っている。それは万古不易たる輝きであり、満天下を照らし出す無謬の光だ。その総てをあるがままに愛さなければならないと、そう思った者がいた。
そう思うが故に悩みを抱えこまなければならないのだと、理解していても。止める事は決してできない。それを理解しているからこそ、見出された者たちはその想いに応えようと躍起になる。これは見出す者ではなく、見出された者たちの話である。
――――人魔統合国家セリオン。リムル擁するテンペスト以外で魔物と人間の共存を成し遂げている国家であり、ヴェルディアスの庇護を受けている者たちの集う国家。
セリオンはヴェルディアスの加護を受けた上位十二名の支配を受ける国である。その事実は多くの者が知るところであり、それ故に権力を求める者たちは何とかその家にへばりつこうとしている。無論、その十二名もその辺りは理解したうえで接しているのだが。
そんな中で、その十二名のまとめ役たるミュリア・アル・ネリ・セリオンは諜報部のまとめ役であるユリア・ノーティスから報告を受けていた。諜報部は島国であるセリオンの要。それを理解しているにも関わらず、セリオンに滅多に姿を現さないのだ。
「それで、こんな早朝から一体どうしたと言うのです?何か火急の要件でも?」
『火急というほどではありませんが。お伝えしておいた方が良いかと思いまして』
「……余計な言い回しは結構。事実だけを伝えてください」
『では、お言葉に甘えて。魔王の誕生を確認しました』
「魔王?それは覚醒級の魔王という意味ですか?それとも魔王種を獲得した魔物が現れたという意味ですか?ないとは思いますが、後者であるのなら時間の無駄遣いも甚だしいですね」
『もちろん、覚醒魔王の誕生ですよ。今の十大魔王の中でも数少ない覚醒級の魔王です。名前はリムル=テンペスト。種族は魔粘性精神体』
「待ちなさい。……スライム?あなたは今、スライムと言いましたか?」
『ええ。彼は間違いなくスライムですよ。魔王となる前から、彼の情報は会得済みですから』
「伝令之星神たるあなたが、無名の魔物時代から?一体、どういう風の吹き回しなのですか?」
『それはもちろん――――ヴェルディアス様直々のご命令でしたから』
その言葉を聞いた瞬間、ミュリアは座っていた椅子を蹴飛ばしながら立ち上がった。その顔には信じられない物を見たと言わんばかりの驚愕と、ふざけるなと言わんばかりの嫉妬と憤怒の感情があった。その感情を受けているユリアは無表情を貫いていた。
「あなたは……」
『……まぁ、あなたの仰りたい事は分かります。ですが、職務を優先させていただいても?』
「……良いでしょう。続けてください」
『では、遠慮なく。現在、仮称魔王リムルは魔王たちの宴に参加しています。恐らく、そこで魔王クレイマンが落ちます』
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