魔王たちの宴と白氷竜
魔王たちの宴。それは魔王たちによって行われる会議――――という名の茶会の総称である。少なくとも、その原点が茶会であるという事は変わらない。今となっては十人も魔王がいる状態ではあるが、本質的な意味で魔王と呼べる存在は数少ない。
覚醒魔王と魔王種、その間にある絶対的と言っても相違ないほどの実力差。それは凡人がその道の天才に挑むよりも悲惨な結果を生み出すことになる。それは多くを見てきたヴェルディアスもまた知っていた。だからこそ、新たに覚醒魔王となったリムルと魔王種でしかないクレイマンにも興味はなかった。
だが、個人的に調べたい事のあったヴェルディアスは会談の会場に赴くことにした。もちろん、誰にも膝を屈することのないヴェルディアスが、形だけであっても魔王の後ろに立つことはできない。だからこそ、別室で会談の光景を見ていた。
「大地竜様、お待たせしました。こちら紅茶でございます」
「ありがとう。君は青の眷属かな?本人ではなく、代役として寄こすほどだ。それなりに優秀なんだろうね」
「感激な言葉を賜り、誠にありがとうございます。レイン様とギィ様の顔を汚すことのないように、しっかりと給仕させていただきます」
「ふふっ、大丈夫だ。基本的に俺はここで見ているだけだからね」
言葉の通り、ヴェルディアスは会談に干渉する気もなければギィに怒るつもりも欠片もなかった。ヴェルディアスはあくまでも最新の魔王であるリムルの状態の確認と、愛する家族であるミリムの顔を見に来ただけだ。まぁ、もう一つ理由がない訳ではないのだが割愛する。
だが、だからこそと言うべきか。後から現れたクレイマンが愛するミリムを殴った時には気を悪くした。だが、ヴェルディアスは忘れていた。己の力が過去の、神と呼ばれた頃の領域と遜色のない領域に達していることを。
いまや、ヴェルディアスが意識を向けるだけで世界には圧力がかかる。それは苛ついただけでもそうなのである。つまり何が言いたいのかと言うと――――気を悪くしたことでヴェルディアスの周囲が悲鳴を上げていた。
その光景はただの一悪魔としては悪夢としか言いようがない光景だった。無論、相手が世界における最強種――――竜種であることは知っている。しかし、魔法やオーラを用いている訳でもない。どころか本人は意図している訳でもない。それなのに、世界が悲鳴を上げているのだから。
このままこの場にいれば自分が滅されてしまうかもしれない。そう思ってしまうのも無理らしからぬ話であり、それとは別だがギィやミザリーにレインたちも会談の場所で冷や汗をかいていた。ヴェルディアスが遠くから飛ばしている視線から厚みが増したからだ。それによって、何人かの魔王がヴェルディアスを認識してしまっている。同時にその者たちも冷や汗をかき始める。
ヴェルディアスは会談の邪魔はしないし、暴れる事はしないという約束でギィの城を訪れている。しかし、基本的に竜種は気まぐれだ。いつその約束を覆すか分からない。城が壊れる事は究極どうでも良いが、問題はヴェルディアスが暴れるという行為そのものである。
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