ハーメルン
コードギアス Hope and blue sunrise
episode1
「アドニス・アーチャー中尉、自分は枢木スザク二等兵であります。今回の作戦で中尉の部隊の一員として配属されました。よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるスザク。彼の前には、自分と同じ年頃と思われる、灰色の髪が特徴的な男が立っていた。
「顔を上げろ。枢木スザク。」
唇の端を上げながら、アドニスが伝える。
「データは読んだ。枢木総理の息子だそうだな。」
表情を変えず、アドニスが問いかける。
「…はい。」
実直に答えたスザクに向かい、自身の顔の前で軽く手を降る。
「…敬語はいい。同い年だ。それに、俺は祖母が日本人でな。このエリアには特別な思いもある。」
「そうなんです…いや、そうなの?」
「ああ、だから今回、名誉ブリタニア人ばかりの部隊を率いる立場を任せられた、というのもある。出来る限り、お前達を生き残らせる努力をすると約束しよう。」
そう言ってアドニスは、皮肉そうな笑みを浮かべながら手を出してきた。彼には、一目見たときからスザクに対して何か感じるものがあった。だからこそ、こうして対等の立場で付き合おうと提案しているのだ。
「ありがとう。よろしく、中尉。」
スザクはアドニスの手を握る。
「公の場で無ければ敬称もいらんよ。適当に呼んでくれ。」
元よりそれほど上下関係にうるさくない性格である。それにしても、特別扱いということには変わりないが。
「では、作戦開始といこう。」
そう言って、アドニスは黒いバンダナを取り出し、額に巻いた。
今回の作戦はクロヴィスが陣頭指揮を取る、イバラキ租界に隣接するツクバゲットーに潜む反乱軍の鎮圧だ。アドニスはサザーランドに騎乗し、名誉ブリタニア人の歩兵部隊を率いる指揮官であった。
「…これだけ小規模な反乱軍を、囲んで潰すのは気が滅入るな。」
呟きながらも、次々と指示を飛ばすアドニス。その指示は的確で、自身が率いる部隊にも、敵の反乱軍にも出来る限り死者を出さないよう努めている。
(僕と同じ歳で、ここまでの能力があるなんて…)
スザクは驚嘆していた。それはアドニスがそれだけ場数を踏んできたということでもあるが、その経験を活かせるかどうかは本人次第だ。だからこそ、その若さで中尉という立場にまで上り詰めたのだろう。
『親衛隊が敵の首領を捕らえたようだ。作戦は終了だな。』
今回の彼の指揮で、部隊内で怪我人は出たものの、死者は一人もいなかった。アドニスはその事に少し安堵し、サザーランドをターンさせようとした。
『何っ!?』
気付いたときには五機のナイトメアに囲まれていた。中には鹵獲されたらしいサザーランドも混じっている。おそらくは、日本を裏切って名誉ブリタニア人となった者達を、確実に殺す為だけの作戦だったのだろう。
『成程…首領が捕らえられたことさえ罠か。』
アドニスが外部スピーカーをオンにしたまま問いかける。
『そうだ。既に我々に逃げ場はなく、この闘いに勝ち目もない。ならいっそのこと、お前達を道連れにしてやろうと思ったのさ。』
言うなり、敵のナイトメアはじりじりと距離を詰めてくる。
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/4
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク