ハーメルン
【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記
十二ページ目

 ♤月♧日 雨のち晴れ

 ネムと阿散井くんがスパーリングするようになって一年くらい。
 白打の達人である砕蜂の手解きも受けているネムの方が強いけど、阿散井くんもその天才的なセンスを活かして鋭い彼女のパンチを躱せるようになってきた。

 「最初の方はフェイントに引っかかることが多かったが、自分の急所に来る奴だけを避ければいいだけなら問題ねぇ。そっから間合いを詰めて反撃してやる――」

 この人の斬魄刀の性質考えるとボクシング特訓要るのかなぁって思ってたけど、白哉の千本桜に対応するためには動体視力を鍛えて、相手の懐に潜り込む技術が必須らしい。
 だから、ネムを相手にする特訓はまさにうってつけなのだとか。しっかし、強くなってるはずの阿散井くんを圧倒するネムって……もしかしてめちゃめちゃ強くなってる? 
 
 「涅さん、あ、あたしともお願いします!」

 そして、相変わらず変な勘違いをしつつ私を監視している雛森桃ちゃんもスパーリングに参加している。彼女は毎日、素振りを1000回欠かさずに行って、その上でシャドーボクシングもしてるみたいだ。
 
 彼女の斬魄刀って鬼道系なんだから意味ないんじゃないのって聞くと、「飛梅から発せられる炎のスピードが早くなりました」と返された。その上で――。

 「あたし、すっごく楽しいんです! 目指すべき方向が見つかったというか……、心の底から頑張ろうと思えますので!」

 はにかみながら、笑顔を作る桃ちゃんは恋する乙女は盲目を地でいっていた。目がキラキラしてて可愛いんだけど、進むべき方向が間違いすぎて不憫になる。
 でもなぁ……。本当に楽しそうにやってるんだよなー。サンドバッグ殴るのも、素振りをするのも……。
 もうしばらく見守るとするか……。


 ◇月◆日 晴れ

 ネムが十二番隊の副隊長になってしまった。そういう約束だったし、むしろ遅すぎるくらいかもしれないけど、寂しい。
 マユリさん曰く、いつの間にか自我が芽生えてボクシングを開始したあたりで実験は既に想像を超えた段階に進んでいたとのことだ。
 霊圧も隊長格レベルまで上昇し、白打の戦闘技術も超一流とくれば技術開発局の最高傑作の名に恥じないと得意気である。

 「あとはこの暴力癖さえなかったら言うことは無かったヨ。君の遺伝子は野生の獣に近いのではないかネ?」
 
 松葉杖をついて、頭に包帯を巻いているマユリさんが私に苦言を呈した。
 あーあ、また何かしようとして反撃されたんだな……。 

 「陽葵様の戦闘力にはまだ到底及びませんので、二番隊を離れても訓練を続けます」

 ネムは何やら私に追いつこうとしているらしい。追いつこうも何も、頭の出来も戦闘技術も何もかも彼女が上なんだけどなぁ……。

 市丸に続いて、ネムも二番隊を去って行った……。でも、二人のせいというか、おかげというか、二番隊のイメージって相当変わった気がする。まぁ、私も人のこと言えないか……。

 
 ♧月▽日 晴れ

 夜一様と兄貴が居なくなってそろそろ百年が経過する。
 尸魂界の危機が差し迫るにあたって――私はなーんにもしてないんだけど大丈夫なのかしら……。二つの隊の副隊長なんてやらされてるから忙しくて何もやれてないんだよね……。


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