TS令嬢はチンポに勝てない。
混浴ダメだってさ。
私はこの非情な現実を受け入れたくなくて、受付に詰め寄る。
「どうして! 何故!! 混浴がダメなんですか!!!! 男女別にしたら温泉じゃないでしょ!」
受付のお姉さんはどこまでも冷静だった。
「混浴は風俗が乱れるので禁止されています。家族風呂をご案内させていただきます」
くっ、くっそぉー!
「ガッデェェムッ!!!」
私は悔しくて、悔しくて床に何度も何度も拳を叩きつけてこの世の不条理に慟哭した。
「お母さん、あの人どうしたの?」
「しっ、見ちゃいけません」
家族連れが近くを通り過ぎていく。仲良しだな。ああ、そうだ。家族風呂だ。家族風呂はカイルと二人っきりだったな。よし、ならば!
「家族風呂お願いします! 夫としっぽりした──―あいたぁっ!?」
私はカイルに気絶させられた。
◇◆◇◆▲◆◇◆
変な夢を見ていたような気がする。
部屋に運ばれ、カイルに呼び起こされて目を覚ました私は涙を浮かべて彼に抱きついた。
「急にどうした?」
「今は何も訊かないで。私に貴方を感じさせて……お願い」
ああ、そうだ。私は愛情を感じたい時、抱きつく癖がある。この人が全身全霊で好きだから、私はそれを前面に押し出すために抱きつくのだ。
この匂い安心する。前世から匂いフェチなところがあり、こうして抱きついては体臭を嗅ぐのがクセだったりする。
すぐに発情しようとする体を抑えながらも、私はカイルを見上げる。
「うん。落ち着いた。カイル、一緒にお風呂入ろう」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫!」
ということで、家族風呂へレッツゴー!
脱衣場は一緒の空間だった。いや、仕切りはあってもほぼ丸見えに近いやん。恥ずかしいな。一体誰だね、こんな羞恥心を捨てさせる所業をする奴は。運営なんだろうけどさ。
何はともあれ、準備に手間取りながらも私はカイルより遅れて風呂場への降臨である。
タオルで前を隠しているものの、妙な気恥ずかしさがある。
ジッと向けられた視線……カイルのものだ。うぅ、視線だけなのに犯されてるような感じがする。
「綺麗だ」
何気なしにカイルが呟く。
「と、当然よ。私はそんじょそこらの女性には負けるつもりはないからね」
「エルに勝てる女性はいないよ」
「当たり前よ。それと、カイル。私は独占欲も人一倍強くて束縛したがる女だから。絶対に浮気とか不倫は赦さないから」
「こんなイイ女を貰って他の女のところなんかには行かないよ」
「それなら、いいのよ」
でも、ただ美人だからってそれだけで終わる訳にはいかない。円満な夫婦関係にはセックスは必ず必要だ。
レスは不和を与え、同時に浮気や不倫への貞操観念が揺らぐ。
それを防ぐには、やはり嫁となる女はセックスに積極的であるべきだ。
エチケットとしてカイルには防音魔法を使ってもらい、私は椅子に座る彼の前で膝をついて、上目遣いに見上げる。もう既にタオルは外しているから、カイルの目は私の裸身に釘付けになる。
興奮しているのか、カイルのオスの化身は既に目の前のメスを孕ませようと臨戦態勢に移っている。
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