STORY10:月一試験-了・諸刃の爆撃
SIDE:無し
リングではプライドが黎を嘲笑っている。フィールドの端で俯せに倒れ、ドクドクと血を流している黎の瞳には光が差し込んでいない。腕からは赤い血が塗ってある白い骨が覗く。
観客達は茫然としている。デュエルで人が死ぬ。その事実を受け止めきれず、脳がフリーズしているのだろうか。
「黎、黎! 死んじゃダメだ! レェエエエエイッ!」
「起きろ! 起きてくれェ!」
「黎くん、目を開けて下さいッス!」
「死ぬなぁ黎! こんなトコで死んだら、オレよりカッコ悪いゾ!」
「天上院くん、担架を!」
「分かったわ! 黎、死んだら許さないからね!」
その傍らで必死に黎を揺り起こすフィオ達。しかし、反応は無い。完全に意識を失い、或いは死んでいるかも知れない。
それでも少女達は懸命に少年に呼び掛けた。彼が生きている事を信じ、再び瞳に光が差すその瞬間を求めて。
そして果たして、その努力は結ばれた。
「ぐ、ぉお、お…………………………っ!」
「これはこれは……。よもや生きていて、デュエル続行の意思まであるとは……!」
ガクガクと痙攣する腕で産まれ立ての小鹿の様に必死に立ち上がる黎。誰が見ても痛々しいその姿で、血を吐きながらも立ち上がる。
少しでも負担を軽くする為、軽金属で血管や皮膚を治し、重金属を鉄球にして地に放る。
なけなしの体力を掻き集め、鉛の如く重い左腕を持ち上げる。
「れ、黎! もうデュエルは止めよう! これ以上は本気で死んじゃう! 早く、早く治療を……!」
フィオのその言葉に、黎は黙って首を横に振った。
「ど、どうしてさ!? 命が危険なんだよ!?」
「セーフティ、ライン、なら……、既に、割っている……。次、意識、を、手放した、時が、俺の、最期だ……」
「そんな!」
愕然とした表情をするフィオ達。
「プライ、ド……! 俺は、まだ、死んで、無い…………! 決着、を、つけるぞ……!」
「はっ! その体で何ができる! 私の場には『超古深海魚シーラカンス』がいる! 『集中豪雨地帯』もあれば壁モンスターもいる! 貴様のライフは100フラット、対し私は2000以上残っている! 足掻けるモノならば足掻いてみろ!
第一何故そこまでする! 所詮は義理の妹、命を賭ける義理があるのか!?」
「……、血が、繋がってる事が、そんなに、偉い、のか…?
俺達は、絶対、に、幸せ、に、なる、って、誓ったんだ……! あいつ、が、不幸、な、まま、死んで、しまうなら……、俺は、幸福も、命も、いらねぇ……っ!」
「……ターン終了!」
プライド:LP 2350
手札:0枚
フィールド
:超古深海魚シーラカンス(ATK 3000)、レインボーフィッシュ(ATK 2000)×2、オイスターマイスター(ATK 1800)×2
:集中豪雨地帯(フィールド魔法)
SIDE:黎
……、都。悪い。
どうやら俺は、ここまでらしい。ゴメンな。
助けに行くとか誓っておいて、こんな情けないカタチで死んでしまう。
世界は、どこまで行っても、俺達の事が嫌いなのか、な。
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