ハーメルン
ニンジャはどのカクテルがお好き?
ocultismo オカルト#2

「居なくなってたりして」

  願望をこめた独り言を呟きながら仕事場に戻る。だが現実は甘くなくフィルギアはそこに居て、さらに隣には別の客が居た。

「いつ来たの?」
「こんばんはジル、今しがたにね。それよりまた挨拶を忘れてる。入ってくるところからやり直し」

  このバーの常連であるアルマがそこに居た。彼女はドロシーと同じようにここで働いて出来た友人の1人だ。同世代で気も合ったのですぐに友人になった。そしてその友人から開口1番でダメ出しを受ける。アルマは結構礼儀に厳しい。

「ヒヒヒ、実際礼儀は大事」

  フィルギアは怒られた同級生を眺めるような笑みを浮かべアルマも頷く。私はしぶしぶ店から出て入りなおす。

「いらっしゃいませ、いつ来たの?はい、これでいいでしょう」
「最後の一言が余計だけど、とりあえず合格」
「ありがとう、合格認定を貰えてうれしい」

  軽口を叩きながらカウンターに向かいアルマを見据えながら問いかける。

「それで何でフィルギアの隣で飲んでるの?」
「彼氏と別れたから愚痴ろうと思ってきたらジルは休憩中で、その時にフィルギアに声を掛けられて奢ってもらっているわけ」
「どうせ一般的には彼氏と呼べる関係じゃない男でしょ。それでまさかだけど、人恋しいからってフィルギアと寝ようとしないよね?」

 アルマがフィルギアに向ける。あれはそこまで好感度が低くない男に見せる目線だ。そうなると寝る可能性は低くはない。アルマはビッチとは言わないがそういう女性だ。

「う~ん。話していても悪くはないし顔もイケメンだから、寝ても悪くはないかなって思ってる。私の好みのカクテルを当てられたのも縁を感じるし」
「そんなの偶々。それにこの男は無職でドラッグ常習者でSEXも下手だから別の男にしたほうがいい」
「随分詳しいのね。フィルギアとSEXしたの?」
「まさか!ドロシーがカクテルを飲む姿を見て下手と判断したから、それを信じただけ。とにかくこの男はダメ」

 我ながらムキになっている。アルマの恋人じゃないのだから誰とSEXしようが自由だし友人でも干渉する権利はない。だがこの男はダメだ。うまく言葉にできないがこの男とSEXしたと思うと嫌な気分になる。

「分かった分かった。ごめんねフィルギア、私は性欲より女の友情を取るタイプなの、だから貴方とは寝ない。恨むならジルを恨んで」
「実際残念。もうちょっとジル=サンの心証を良くしておけば良かった」

 アルマはウインクしながら告げフィルギアは残念そうな態度を見せる。それを見て無意識に胸をなでおろしていた。だがフィルギアは残念そうな態度を見せるが目には落胆の色が見えてない。アルマはともかくそこまで乗り気ではなかったようで、傷つけないように残念がったのだろう。アルマの性格からして魅力がないと言われるとちょっと傷つく可能性が有る。意外と気が利く。

「そういえば随分とフィルギアに詳しいけど、本当に寝てないの?」
「寝てない。詳しいのは昨日の開店から閉店間際までずっと居て、色々と聞かされたから」
「ふ~ん。しかしジルがここまで嫌がるのも珍しい。何か酷いことした?」
「何も。普通に喋ってたのにこの態度、傷つく」

  小学生でもしないような泣きまねをしてアルマはあやす真似をしながら酷い女と小言を言う。どうやら2人は私を揶揄おうと息を合わしてきている。結構ウザい。

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