ハーメルン
ARMORED CORE -Resume “N”-
Act.2

その向こうで歓声が湧き上がっていたからだ。
流れ弾のリスクを考えれば当然といえば当然なのだが、観客が間近で見るボクシングやレスリングみたいなものだと思っていた彼には、少し異様に見えた。

彼の目の前数百メートル先には一気の銀色のACが立っていた。
ジョンが試験のときに乗ったACの外観、装備そのままで、肩に搭載されていたはずのレーダーとミサイルが搭載されていなかった。
ジョンはガレージに向かう前にブリードと話したことを思い出す。

「ランクNo.49ボトムライン、機体名デフォルト。その名の通り、初期装備の機体を駆るレイヴンだ。だがコイツのライフルの狙いは悪くない。おまけにライフルは連射性能を限界まで高めてる。あと積極的に接近戦を仕掛けてくるから注意しろよ。」

“キィーーーーン!”

スピーカーから鳴り響くハウリングの耳障りな音でジョンはハッとする。

「グリットワン!やはり最下位に転落してしまうのか!?ボトムライン!...そして彼に挑むのはグリットツー!機体の新人!白星なるか!?ハウンド!!さぁ、両者出揃いました!制限時間内に残りAPの多い方が勝利となります!試合開始5秒前!」

レバーを握るジョンの手に力が入る。

「4...3...2...1...開始!」

開始の合図と同時に二機のACが機体をブーストさせ、相手に接近する。
制限時間は二分。
先に仕掛けたのはボトムラインだった。

何発も飛んでくるライフルの弾をジョンは無視して両手のライフルを撃ち込んだ。

互いに被弾しながらの削りあいとなるが、あまり大きなダメージには至らない。
それどころかボトムラインは前進あるのみと言わんばかりに斬りかかってくる。

“バシュッ!”

デフォルトのブレードは空を裂き、機体ギリギリをかすめた。
ジョンがバックブースターを作動させ機体を一気に後退させたのだ。
これにはボトムラインも驚きを隠せず、一瞬反応が遅れた。

「おぉ!ハウンド!バックブースターでブレードを回避しました!」
「なかなかやりますね。」

ボトムラインはつぶやく。
その声にはまだ余裕があった。
ジョンは急速後退の衝撃か、緊張からくるものなのかコクピットの中で少し息を上げていた。

「ですが、まだこれからですよ。」

ボトムラインはそう言うと機体をブーストさせ、もう一度ブレードで斬りかかる。
ジョンは機体を横方向にブーストさせ、距離を取りつつライフルで応戦した。

「距離を取ろうとしても無駄です!」

ボトムラインはディンゴキラーの足に目掛けてライフルを撃った。
ジョンはバックブースターを使い被弾は免れたかに見えた。

だが、弾は左足首に当たって機体はバランスを崩す。
一体何が起きたのか、ジョンはすぐには理解できなかった。
実況の男は彼の戦いを何度も見てきた経験からか、すぐにその答えを導きだした。

「で、出た!ボトムラインの早撃ちです!目にも止まらぬ二連射!まさに神業!!」

そう、彼は二発撃っていたのだ。
彼の装備しているライフルは確かに初期装備品のものだが、徹底的に連射性能をあげている為、もはや別物と呼べる代物になっている。

彼はジョンがバックブースターを作動させると読んでわざと二発目の照準をずらして撃ったのだ。

[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析