ハーメルン
仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ
EP.02[冥王(Pluto)]

 先刻起きた出来事と同じだ。攻撃を完全に無力化されてしまった。
 一体何をされたのか、アズールには敵の能力の正体が理解できない。
 すると、それを見極めんとすべくピクシー三姉妹が動き出す。

「ヤァッ!」

 プルートが放った斬撃をピクシーレイピアのナックルガードで受け止めた後、衝撃を音に変換。
 これを衝撃に再変換して跳ね返す事で、敵に大打撃を与えるのがピクシーの得意技である。
 しかしその音すらも黒い穴の中に取り込まれ、消失してしまう。

「え、ウソ!?」
「そんな……音の攻撃も効かないだなんて!」

 セインLとセインRが驚き、アズールやピクシーと共に距離を取る。
 プルートからの剣閃は回避できたものの、状況は何も変わっていない。
 それでも諦めず、アズールは何度も光線を放つのだが、その度に黒穴へと吸い寄せられて消滅する。
 事態を見ていたキアノスは、そこでハッとして声を上げた。

「まさか、アレは擬似的なブラックホールなのか!?」
「ようやく気づいたか、その通りだ」

 プルートはフンと鼻で笑い、剣先を五人の方に突きつけた。

「音も光も温度も引力すらも存在しない、全てが遮られた完全なる死の空間……『プルートスペース』への入口を生み出すのが俺の能力だ。冥王の名に相応しかろう?」
「だから攻撃が通用しない、って事なのか」

 息を呑みつつ、アズールは剣を強く握り込む。
 あらゆる力を飲み干すあの凶悪な力に対抗するには、如何にするか。
 思考の最中にも、プルートは動く。

「どうした、手が止まっているぞ!!」

 プルートの刀身がいくつかのパーツに分離し、ワイヤーのように光線で繋がれた状態で、鞭のようにしなる動きでアズールたちの装甲を斬る。いわゆる、蛇腹剣だ。
 素速い斬撃を防ぐ事ができず、キアノスとピクシーたちは吹き飛ばされてしまった。そこへさらに、バイパリウムたちが追い打ちをかけようとする。

「くぅ!?」
「ううっ!?」

 アズールはかろうじて防いだが、プルートが見逃すはずもない。
 分離した刃が元に戻すと、今度は真っ直ぐに斬りかかって来るのだ。
 反撃しようにも、またブラックホールで吸い込まれてしまう事になるだろう。そう考えた結果、アズールはある結論を導き出した。

「光も引力も効かないのなら、これだ!」
《スワイプ!! ルクシオンムーン、ハイパーリンク!!》
「ハイパーリンクチェンジ!」

 アズールメビウスの胸の紋章が月の惑星記号に変わると、突然に彼以外の全ての人間やデジブレイン、物体の動きすら減速する。
 ルクシオンムーンの能力。それは、時流の操作だ。流石に巻き戻す事はできないものの、加速・減速を自由に行う事ができるのだ。

「流石にブラックホールでも、時間の流れを変える事はできないみたいだね」

 向かってくるプルートの側面に回り込んだアズールは、そのままスターリットフォトンで形成した武装によってバイパリウムを殲滅しつつ、剣を振り上げる。
 そして、アズールセイヴァーによる斬撃を彼の脳天へと叩き込んだ。

「これで僕らの勝ちだ。時の流れよ、元に戻れ……!」

 合図と同時に、遅延して引き伸ばされた時間が正常に返り、攻撃を受けたプルートが短い苦悶の声と共によろめいた。

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