ハーメルン
断絶世界のウィザード
ゴンドワ封鎖領域 Ⅳ

 レベルが4に上がった。そして《詠唱術》と《二刀流》のレベルが2に上がった。残念ながら《二刀流》のレベルアップによる恩恵は何もなかったが、《詠唱術》は思ったよりも凄いアビリティが解禁された。

 その名は〈詠唱消去(キャストカット)〉、なんと180秒に一度、魔法を発動する前に使用する事で無詠唱で発動させられるというアビリティだった。しかもコストはない。恐ろしいレベルで使い勝手が良い。確かに3分に1度という制限は存在しているが、その制限込みで考えても詠唱時間を考えずに魔法を2連射できる、というのは恐ろしく強い。考えてみよう、〈イラプション〉の1度目の爆破の後に次の〈イラプション〉を発動させられるのは4.85秒の詠唱が入ってからだ。頭の弱いラージビートルが相手だったから良かったが、これが知性の高い生き物であれば、範囲から逃げようとして即座に離脱するだろう。

 そういう敵を相手する場合があるかどうかは解らないが、少なくともそういう動きを取るような相手であれば、〈詠唱消去〉で2連射の魔法を叩き込んで一気にダメージを稼げるだろう。

 3分に1度、というコストは本当に重い。今の所大体戦闘は長くても15秒以内には終了している。そこまで長引くとは思えない。だから纏め狩りで1度使えばしばらくは使えないだろうが、その事を込みにしても即座に魔法を差し込めるというのは魅力的すぎるアビリティだった。

 《詠唱術》、神スキルだった。これが初期から選択可能ってマジ? 壊れじゃね? とりあえず同じキャスタービルドの仲間には必須クラスの化け物性能なので、これをデッスコードでマルージャチームにも共有して、シャレムWIKIにも記入しておく。この手の情報は自分から率先して公開するのが先駆者、開拓者の義務だ。

 この手のデータが積み重なる事でより緻密なビルドが可能となる。お互い、協力して楽しいゲームを遊ぶのが一番。ついでに自分の保有しているスキルでWIKIに記入されてないものも追加しておく。それが終わった所で再び移動は再開し、

 ついに、街道は境目を超える。

 それまではのどかな道路の様子だった。街の近くは整備されていたが離れると段々と整地されただけの道路となり、その脇には緑が広がっている、そんな何でもない風景だった。遠くに視線を向ければ山が見えて、そして闇色の空が手を伸ばしているのが見える。だが段々とその景色も、黒く染まり始める。

 最初に感じたのは空の暗さだ。まだ時間は明るい頃なのに、空が暗くなり始めた。見える太陽の色が黒い気がしてくる。そして粒子だ―――黒い、輝く粒子が空気に乗って漂っているのが見え始める。一言で言えば汚染されている。そんな印象を受ける環境だった。空をじりじりと侵食する闇色が空から地上に降り注ぐ。その濃い色が影となって地上を染め上げ、この世界の住人達では触れる事の出来ない環境を生み出す。

 ここから先は、NPC達の踏み込めない領域だった。

 この先に進むためには、PC―――つまりはプレイヤーたちの力が必要となる。ここを攻略するのがプレイヤーの目的でもある。

「ついに来ちまったなぁ、封鎖領域」

「本番はID(インスタンスダンジョン)らしいからまだ先みたいね」

「多分ここまでぶっこんで来てるのは俺達ぐらいだろうなぁ……後はあっち側の馬鹿達か」

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