ハーメルン
シルヴァリオ メタモルフォシス ~シルヴァリオ ラグナロク Side:Capricorn~
Chapter Ⅳ 出立、そして/To each road
「ありがとうよ、アルヴィン。制圧作戦前のいい肩慣らしになった。魔星の煌めきに翳りはねぇ。
まぁきっとアレだ、作戦中に交戦が予想される使徒や神祖なんかよりも、お前の方がよっぽど手強かったってなるのがオチだろうぜ」
「そうなることを願っていよう。
勝てよ、ジェイス。殉職することだけは許さんぞ。お前にはまだ、拳の稽古を付けてもらわなきゃならんからな」
そう言い、血塗れになった二人の隊長は熱苦しい男の握手を交わした。
両者は共にご満悦の様子で、その強面の顔面に気持ちが悪いほどの満面の笑みを浮かべている。
……あの後、何故か二人は星辰光を解除し、徒手空拳での殴り合いを始めてしまった。
ジェイス隊長の稼働チェックじゃなかったのかよと突っ込みたいところだったが、曰く「興が乗った」とのこと。興が乗って素の殴り合いが勃発してしまうってどんな思考回路していればそうなるんだ。頭の中に剣闘士でも飼っているのかよと思う。
ともあれ、結果勝利したのはジェイス隊長だった。
当然だろう。星辰奏者としての戦いならいざ知らず、ステゴロにおいての戦闘ならばジェイス隊長の土俵なのだから。普段弓矢を主要武器としてるロバーツ隊長に勝ちの目があるはずもなく――それでも信じられないほどに善戦してたが――お互い満身創痍になりながら決着が告げられたのだった。
いや、ていうかちょっと待ておい。
「握手してる場合ですかこのダブルトンチキ隊長ズッ!
すぐ医療室へ向かってください、特にジェイス隊長! 出血量エグイですって。ロバーツ隊長、無遠慮に切り刻みすぎです! 模擬戦って言ってんのに加減なく本気で星をぶつける馬鹿がどこにいますか!
あ~~~ていうかジェイス隊長の吹っ飛ばした壁面の修繕依頼もしなきゃだし本当にもうこの大馬鹿たちは――――!!」
『ははははは』
「何呑気に笑ってんですかぶち殺すぞコラァァァァ――――――ッッ!!」
神よ。何故私に平穏を与えてくださらないのですか。
夕焼けに染まる天を仰ぎながら、私は自分の胃袋が爆散する音を体内から聴いた。
いっそ殺してくれ。いや、マジで。
…
……
………
「それじゃあ行ってくるぜ。留守番よろしく頼むぜ、
鳴殺笛
(
シューリンクス
)
。それと、ウォーライラの嬢ちゃんもな」
あの模擬戦から一週間。ついにカンタベリー制圧作戦の幕が上がろうとしていた。
作戦決行にあたり、ジェイス隊長は今日付けでアドラーを後にし、カンタベリーに乗り込み制圧を開始する。
神祖や使徒といった存在を甘く見るわけではないが、ジェイス隊長なら楽々完勝してしまうのではないかという気がしてしまう。あんなぶっ飛びっぷりを見せられたら、そう感じてしまうのは道理だろう。
何せ、味方の私ですら恐怖と戦慄を覚えてしまった。
身も蓋もなく言えばドン引きだ。ジェイス隊長への苦手意識がより跳ね上がったのは語るまでもない。
アルヴィン隊長にも同じことが言えるが、何よりジェイス隊長に対し異常に感じたのはあの出力差での洗練された立ち回り。挙句鼻歌を歌うような気軽さで覚醒を連発するのだから、『化け物』と形容するしかない。
こんな頭のおかしい男と結婚するとか、奥さんはどこまで豪気な性格なのか。それとも男が見る目がないのか。どちらにせよ、二人の子供がかわいそうだ。
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/3
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク