ハーメルン
ゴーストフロントライン
2063年 2月1日 14:30 M16A1MOD3

「私の番か。おいで、すみれ」
「お父さん」
かわいい娘が自分から寄ってきて、膝の上に乗ってくる。同年代の子供と比較しても小柄で少食な我が子を抱き上げて、腕の中へ。AR小隊結成前からそばにいるし、この子は私に一番懐いていると言い切れる。澄んだ黒い瞳が私を優しく覗き込んできた。
「すべて話そう。まずはな…」
M4のためにおとりになって、一度消えたことの裏側。また戻ってきてから考えていたこと。鉄血のハイエンドモデルドリーマーによって傘ウィルスを埋め込まれたこと。それを拡散するわけにはいかないからと再び消えたこと。それらを全部M4達にも話した。
「すみれ。ごめん」
「いいの。お父さんが行方不明になって、見つかって、またいなくなって。M4お姉ちゃんや15お姉ちゃんが行方不明になったことを理由に懲罰人事からの処刑場送りなったの。今はその道中。でもね、いいの」
やはり私が、私達が消えたからか。M4とAR-15は知らなかったのか、ぎょっとしている。
「まだ8歳の子供になんてことを。この子は私達の膝の上だけが居場所なのに」
AR-15が腹を立てるのも無理はない。飛び級で学校を卒業したものの、就職先での後ろ盾は何一つない。かろうじてヘリアンとペルシカさんがわずかながら社内政治的な牽制ができていた程度。私達が物理的に守れてはいた、けど人の悪意からは守れなかった。また抱きしめて小さな命がまだあることを再確認した。良かったまだこの子は生きている。
「すみれ」
「お父さん。すがりたいけど、きっとお父さんやお姉ちゃん達にはやるときめた事があるみたいだから」
賢い子だから、助けを求めることを諦めてしまったのか。優しい笑顔に隠した絶望。私が思わず取り繕った表情をかなぐり捨てて怒りを吐き出す。怒りに震える声を静かに紡ぐ。
「すみれに悲しい笑顔をさせるやつを許さない。幸せにするために私達が育てているのに」
「お父さん。気にしないで。私はお父さんやお姉ちゃん達が無事ならいいの」
気にするに決まっている。我が子を守らないで何が親だ。そのためなら私は何だってやる。
「姉さん。復讐は任せてください」
M4が怒りのままに服を掴んだ右手をぐっと握り込む。
「そうだな。調べて復讐しよう」
「あの、あたいを忘れて放置しないで。何も話してないよ。あたいはグリフィンが放棄した基地から情報漁ってたんだ。実はあたい、蝶事件って呼んでる出来事の断片にいたの。知りたいでしょ?」
UMP40と名乗った人形が言葉が私達に大きな一石を投じた。

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