ハーメルン
妹がいつの間にか人気Vtuberになってて、挙句に俺のお嫁探しを始めた
五話『きっかけ』
私の両親は唐突に私の目の前から、この世界から消え去った。
それは中学一年の頃に唐突に訪れた。
暴走したトラックが私たちの乗っている車に突っ込んできて、車の前部分がグシャグシャになっていた。私には一体何が起きたのか分からない。強い衝撃と共に、体が揺さぶられいつのまにか気を失っていた。
次に目を覚まして見た景色は、泣きながら私の手をずっと握っているお兄ちゃんの姿だった。
私はそんな顔を見ながら、ただひたすらに呆然と病室のベッドの上に横たわっていただけだった。
その後、幸運にも骨一つ折れていなかった私は退院して、両親の葬式に出席した。
しかし私はまだ事態を飲み込めていない。二つの棺桶の中に目を瞑って眠る両親の姿を見て呆然としていた。
両親は優しかった。いつも私の事を考えてくれたり、お兄ちゃんにも「そんなに頑張らなくて良いんだよ」と口癖のように言っていた。
すぐ近くから声が聞こえる。
葬式に出席していた親戚の人たちだ。聞こえてくる言葉は耳を塞ぎたくなるような言葉。
『子供二人も置いて死んでくなんて、とんだ奴だな』
『あの子たちはどうするのよ』
『俺はごめんだぜ、引き取るなんざまっぴらごめんだ。お前の所は?』
『嫌よ、あの子がまさゆきちゃんに色目でも使ったらどうするのよ』
もう私を守ってくれる大人は居なくなった事実が背中にのしかかる。
ダメだ。私はもうダメだ。
もう嫌だ……。
その後はお姉さんが保護者となってくれたとお兄ちゃんが言っていた。
でも基本は俺が働いて、この家を……萌香を守ってやる。とも言っていた。
でも、もう私の心は──。
私は事故のトラウマで、外に出るのが怖くなり、部屋からも出ない日が続いた。
ずっと、ずっと薄暗い部屋の中で一人で過ごしていた。兄もこんな私をすぐに見捨てるだろう。そう思っていた。
でも───。
「萌香、おはよう」
「ご飯できたから部屋の前に置いとくな」
「じゃあ行ってくるよ、萌香」
ずっと、ずっとだ。
毎日毎日、部屋の中で引きこもるしか出来ない私に優しい言葉をくれる。
365日、毎日同じように……。
引きこもる私に「部屋から出ろ」とも一言も言わずに。
凍りついていた心が、どんどんと癒されていくような気がしていた。
お兄ちゃんの顔が見たい。お兄ちゃんのそばにいたい。
でも、今はまだ顔を合わせる資格が私にはない。だって私は何もしていないから。
お兄ちゃんは私のために一生懸命になっているのに、私は何もできないから。
泣きながら部屋のドアの前に立つ。
そしてドアノブに手が触れた瞬間、あの時の……事故の光景や人の私を見て嘲笑う声がフラッシュバックする。
何で、何で外に出れないの……。
その日以来、ずっと無気力だった。
ずっと何をするわけでも無く、ただ日々を無意味に過ごすだけ。
そんな日々だった。
ある日私は、とあるものを見つけた。
『やっほーいにゃーん! 今日も配信はっじめっるよーん!』
・やっほーいにゃん
・にゃんにゃん
・無理すんなよ、おばさん
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