ハーメルン
幻想郷で死に戻る俺は
四話 春雪異変 〜spring snow.

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今は4月。雪も溶け、桜を迎える季節のはずなのだが……一向に春が来ない。


「これが普通なんですか?」


「いや……異常だ……。春は遅くても3月中盤には来るはずだし……そもそもだ」


春が来ないで済む問題では無い。雪が降っているのだ。
普通に考えてあり得ない。


「なんだよこれ……」


冬が長引いて、里の貯蓄も自信が無くなってきた。
何よりここまで雪に降られては春に採取するものが出来ないのも辛い。


「原因が分かりませんね、過去にこんなこと一度も無かったので……」


「ここまでは異常すぎるとは言え、異常気象とかって存在はしていると思いますが……無かったんですね?」


「幻想郷では災害や異常気象は起きませんので」


「何それすごい」


幻想郷って場所はやっぱり理想の地なのじゃないかと。
人間が暮らして行く上でトラブルが少なそうに思える。


「どっかの誰かが悪さしてるとか?」


「そこまでは分かりませんね。自分達も」


「そう言う妖怪が居たり……?」


「前にも言った通り閉鎖的なせいで、そう言ったことは知りません……」


そもそも雪女みたいに雪を降らせる妖怪が居たら、こっちに接触してくるか?
いや分かんないが……姿を見せずにはおかしいなとは思った。


「……どうしようもないんですか?」


「終わってくれることを祈るしかありません」


祈ると言われたように、祈りながら寝て起きて、また寝た。
そうして数日が経っていく。
雪は、収まるどころか強くなる一方だ、何が起こっているんだ……?


「……薪ももうだいぶ少なくなってきた」


「無理してでも採りに行きますか?」


「いや……雪でだいぶ湿っていて正直使えたものじゃないだろうね」


「不味いですね……」


「里全員が大変なことになるか……」


「それだけではありません……」


「何が……?」


いや色々とあるだろうけど、正直目を逸らしたい。
これ以上何があると言うのだ。


「いや……やっぱりいいや」


「そうなのか?……気になるがそう言うなら」


多少モヤモヤが残るが言わないと言うなら仕方ないだろう。
一先ずは諦めるとする。
ただ隠したいことなんかあるのだろうかと。


「それじゃあ今日は帰ります」


「気を付けて」


そのまま借屋へと帰る。正直帰るまでもしんどいんだがね。


「……」


残された男は心配そうに蓮司を見送る。
完全に去った後にポツリと一言溢した。


「大丈夫かね……少年を守れるなら守りたいが……正直自信がないな」


小野寺蓮司、彼の置かれている現状を改めて思い知らされながら。

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