ハーメルン
クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)
女性に太ったと言ってはいけない

 冬木慧人。
 私が慕っている男性の名だ。

 私は彼との出会いを一生忘れることはないだろう。
 彼とはCiRCLEで出会った。
 用事があった私はバイトである彼に声をかけた。

「すみません」
「……あなた様が女神ですか?」
「……………………は?」

 これが彼との最初の会話。まさか、初対面の男性にいきなりこんなこと言われるとは思いもしなかった。
 この後、正気を取り戻した(?)彼は普通に対応してくれたが……私の彼に対する最初の印象は変人の一言に尽きる。それと同時に、何故か彼からは近寄ってはいけない空気を感じた。

 彼は確かに変人だった。クールビューティーは尊いものだとか何とか話してきた。何度も何度も。
 正直、意味が分からない。今も意味は分かってない。
 私は彼に対して素っ気なかっただろう。それどころかその頃のストレスから厳しい言葉もかけてしまっただろう。でも彼はそんな私から離れず、かと言って近づきすぎず。見守ってくれる……と言うと変かもしれないが、そんな距離感を保っていた。

 その距離が一気に縮まったのは、あの出来事があったのが大きい。

 私は彼のお陰で救われた。

 彼はそんなことしてないと言うだろうが、私にとっては彼の言葉は……存在は大きかった。

























 最近、俺は気になってることがある。

「…………紗夜さん」
「何でしょう?」

 場所はファーストフード店。まぁ、この前、テスト勉強見てもらう代わりに奢るって言っちゃったし。よく考えたら週明け英語の単元テストだったから、奢るついでに勉強を見てもらおうってなったわけです。担任の科目だし真面目にやらんと呼び出し喰らうからなぁ……。

「質問いいですか?」
「どうぞ」
「ジャンクフードばっか食って太らないんですか?」
「…………っ!」

 一瞬で空気が凍り付いた。……ん?誰か何かマズいこと言ったのか?

「あ、ここの問題教えてほしいんですけど……紗夜さん?」

 すると、俺のノートにフライドポテトの絵とハンバーガーの絵を書き始めて……はい?

「いいですか?ここのフライドポテトは100gあたり約250kcal、糖質は約30g。私はLサイズ、約170gを頼んでいますので、カロリーと糖質は?」
「……え?あ、問題ですか?」
「遅いです。カロリーは約425kcal、糖質は約51gです」

 すると無駄に綺麗な絵に、その情報を書き込んでいく……待って。それ俺が今度出すノート……まぁいいか。それぐらいなら可愛いものだ。

「そしてここの一般的なハンバーガーについて。こちらは約100gでカロリーは約250kcal、糖質は約30gです。はい、このセットのカロリーと糖質は?」
「え、あー675kcalに81gです」
「及第点をあげましょう」

 ……え?結構早かったと思うのだけど……と、さらさらときれいな字で埋めていく。あぁ……どんどん情報が……俺それ提出したら絶対に怒られる……。

「……聞いていますか?」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析