第十局 完璧な将棋
通天閣からほど近い天王寺動物園。まぁまぁ有名な観光スポットだ。俺は本日ここで取ったばかりのロリ弟子と待ち合わせていた。
「こんなところ来て何するのよ。まさかとは思うけど動物園に行こうなんて言わないわよね」
「なんだ?動物園に行きたいなら言ってくれれば良いのに」
「はぁ?行くわけないでしょ?本当にどこに行くのよ!」
「安心しろ。将棋指しに来ただけだ」
「それにこんな所で将棋指せるわけ?『どうぶつしょうぎ』でもやるの?」
「んな訳あるかこっち来い」
そう言って動物園とは逆方向に向かい薄暗いアーケードの入り口で足を止める。『ジャンジャン横丁』正式名では無いが何故かこの名前で呼ばれている。
天衣はそれを見て思わず
「なに?この汚らしいアーケードは?」と一喝。
天衣のお付きの晶さんは若干引いている。そりゃ結構暗いし、なんかヤバイ雰囲気あるし入りたく無いわな。
「まぁそうなるわな。新世界って呼ばれててな、大阪で一番ディープでアングラな場所と考えてくれれば問題ない」
「ふぅん」
あんまり興味無さそうに答える天衣。本当にどうでも良さそうだ。
「昔、通天閣の地下には西日本最大の将棋道場があった。そこでアマチュア強豪たちが毎日争っていた。その名残がこの地にまだ残っているんだよ。っと、ここで良いかな?」
そのアーケードの中を少し進みとある店の前で止まる。『双玉クラブ』と書かれた看板の店だ。
ガラス張りの窓から中で行われている将棋の様子が見れる。
「どうだ?やれそうか?」
その将棋の様子を見て天衣は呆れたように言う。
「ふん!もちろんよ。こんなレベルと一緒にしないで!」
「オーケー。なら席料払うからお金あるか?」
「ブラックカードならあるけど?」
初めて見たわ。ブラックカードを持ってる小学生とか。というか使える訳無かろう。
「あー晶さん?小銭とかありますか?あとレシート」
「お金なら糸目をつけるなと当主に言われている。遠慮なく言ってくれ」
「なら千円札を5枚お願いします」
「わかった。しかしレシートはなにに?」
「こうするんです」
お札をクルクルと巻きそれをレシートとテープを使って固定。さらにタバコの空箱にそれを入れる。んで、それを天衣に渡す。
「ほい」
「なによ、これ。なにに使うの?」
「これで『真剣』をやるんだ」
「真剣?」
「そ。簡単に言えば賭け将棋だ。レートは一局千円。一回負けたらこれを一本渡す。この空箱満帆になったら晴れて研修会試験に参加してOKだ。分かったな?」
いやー懐かしいなぁ。昔は年上相手にボコりまくって金稼ぎしてたわ〜その金で妹や弟と食う飯は美味かった。
「わかったわ。今日で終わりにしてやるわ」
「頼もしいな。箱を見せたら合図だ。近くから2人で将棋やるフリして見てるから好きにやって来い」
席料を払ったのち天衣はスタスタと奥の方に入っていく。俺と晶さんはそれを追って奥まで向かう。俺は晶さんと天衣の座った横の席に座る。天衣はタバコの箱を見せる。「平手で良いかしら?」と言うと「座んな...」と返される。勝負成立だ。ちなみに天衣の向かいにいるのはなんというか......その.......男?女?どっち?的な人だ。なんか凄い←語彙力の崩壊。
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