ハーメルン
兄弟子のおしごと!
第十五局 将棋星人

「降級点がついちゃったんです」

「っ!」

降級点。棋士を目指す誰もが味わうであろう悔しい結論。10局さして2勝8敗以下の成績を取ると付く降級点。かく言う俺も付いた。駒落ちで振り飛車を使わなかったが故だが。

それ故に、その悔しさ故に俺は天衣に振り飛車を擦り込ませたかった。

「おじさん?」

「あ、ごめんね。少し考え込んじゃって」

「降級点をですか?」

「うん。桂香さん相当悔しがってるだろうね」

「おじさんも付いた事があるんですか?」

「もちろん。俺だけじゃ無いさ、八一だって付いた事がある。みんな一度は通ってるさ」

「師匠も....」

「そう」

でも桂香さんに取っては厳しい現実なんだ。"25歳"の桂香さんに取っては特に....



○●○

「ごめんね。急に呼び出しちゃって」

「いいよ。別に。それでどうしたの?桂香さん」

「私ね。今日の研修会で降級点をとっちゃったの」

「うん」

銀子ちゃんは一瞬息が詰まった。同時に何か心の奥底で締め付けられた様だった。

「私はもう覚悟はしていたの。"年齢制限"の」

「うん」

「だから教えて欲しいの」

「うん」

「銀子ちゃん。いや空先生。私に将棋を教えてください。1ヶ月だけで良いです。将棋を教えてください。先生に尽くしますから」

「桂香さん。頭上げてよ!そんな事しなくても教えるから」

唐突に土下座した桂香さんに銀子は驚き慌てて頭を上げる様に言う。

桂香さんは必死だった。

○●○

今日は天衣の都合上、ゴキゲンの湯には行かない。というかまず玉将が奨励会員(多分銀子)と研究会らしいので無理。

研究会かぁ............スケジュール的には行ける☆


「もしもし.........そうです」

「..................」

「じゃあお願いしま〜す」ピッ

よし、予定作り完了。うまくいけば被るし完璧☆そうと決まれば新幹線のチケットを........気が早いか。

とは言えまずは桂香さんだ。降級点がついた以上、今度の研修会で降級点を消すか、付いたという悔しさに打ち勝つかの2通りだ。まずは前者を目指すと思う。でも後者でも「頑張る。諦めない」という心が大切。棋士とは、特に対局は心が折れたら負けだ。諦めたらそこで試合終了なのだ。

○●○


「まず、正直桂香さんは弱くなってる」

「っ!」

「でもそれは理由が見えてる」

「それは...なに?」

「棋士の研究を真似しちゃダメ。あの将棋星人と私たち人間を一緒にしちゃダメ」

「なに言ってるの?」

「あいつらは何をしなくても分かるの。感覚で。だから私たちには到底理解出来ない手でも完璧に指しきる。八一もそうだけど特に兄弟子。天災の名前は伊達じゃ無い。山城桜花の供御飯さんもエターナルクイーンの釈迦堂さんにもそれは無い。私にも無いし、月宮坂はまず論外」

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