醜聞
漢気ヒーロー・烈怒頼雄斗。本名は切島鋭児郎、長年コンビを組むヒーロー爆心地こと爆豪勝己とは雄英高校からの付き合い。
口が悪く粗暴、容貌からして苛烈さが滲み出、"ヴィランっぽいヒーローランキング"ではデビュー当初からトップの座を放さずにいる勝己とは対照的に、彼はその人柄を主として評価されていた。明るく朗らかで、誰にでも公平。子供からお年寄りまで、幅広く愛されるヒーロー。また調整能力にも長けており、勝己がその傲岸不遜な態度でもって全方位につくる敵を懐柔する役割も果たしてきた。市井の人々は言う、なぜあんな絵に描いたような"良いヤツ"が、あの悪鬼羅刹を支え続けているのか──と。
その切島鋭児郎に舞い込んだスキャンダルは、まさしく寝耳に水のことだった。
「烈怒頼雄斗が……スキャンダル?」
当人も含め皆、唖然としていた。だって切島鋭児郎という漢は、何より勝己の相棒たるヒーローであることを優先して行動している。それが原因で彼女にもふられ続けるほどには。
「お、俺が何したっつーんだよ……バクゴーみたいに女遊びもしてねーぞ!?」
「………」
大声でのたまう切島を睨む勝己だったが、事実には違いないので何も言えない。
「轟!」
救いを求める視線を受け、轟は冷静に応じた。
「四、五年ほど前、おまえと交際していたNという女の告発だそうだ。心当たりはあるか?」
「N……あっ」思いきり、あった。「菜々美か……!前の前の彼女……」
思い返しつつ、苦々しげな表情を浮かべる切島。かの恋人とは歴代で最も深い、それこそ結婚を意識する仲にまでなった。だから、別れることになったときは尚更修羅場だったのだ。しかし何故、今さら?いったい何を告発しようというのか?
「……皆の前で言っていいのか?こういうのはあまり他人には聞かれたくない話だと思うが」
「話せ」
「ちょ、かっちゃん……!」
本人より先んじてそう言い放った勝己に、入れ替わった幼馴染が非難がましい目を向けた。
「どうせ総掛かりで対応しなきゃなんねーし、そもそも週刊誌に出ンなら遅かれ早かれ知ることになんだぞ。違うか?」
「そうだけど……」
切島の覚悟の問題もあろうに。
「……爆豪の言う通りだ。教えてくれ、轟」
「わかった」
無表情でスマートフォンの画面に目を落とす轟。そこには、部下から送信された週刊誌のゲラが映し出されていて。
「"おしゃぶり、よだれかけ、甘えん坊赤ちゃんプレイ 漢気ヒーローの異常な性癖"……」
「!!!??」
切島がまるで個性を使ったかのように硬直し、それが周囲一帯にまで感染していく。その渦中にあって、轟は記事の内容物を淡々と読み上げていく。
「『彼はおしゃぶりをしたりよだれかけをしながら、ママァママァとベッドの中で甘えたい放題、いやらしいおねだりし放題、もっと気持ちよくしてほしいでちゅ~がプレイ中の口癖でした』……」
「………」
表情をなくしていた活真が不意にすっと酸素を取り込み、
「変態だ────ッ!!!」
叫んだ。
「き、切島……てめェそんな趣味隠してやがったのか……」
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