第拾壱話 水の呼吸
「ここが狭霧山か。」
慈悟郎さんと獪岳に別れを告げた後、俺は五大流派最後の一つである「水の呼吸」を学ぶためにここ「狭霧山」へと来ている。
ここに水の呼吸の育手の方がいるらしい。
山に少し入ったあたりで小屋が目に入る。
「あそこだろうか。」
その小屋に歩みを進め、戸の前に立ち扉を叩く。
「ごめんください。」
「む、来たか。」
声が聞こえて間もなく扉が開く。
扉が開くとそこには天狗の面を付けた老人がいた。
(・・・え???)
突然のことに困惑する。
水の呼吸の育手は妖怪だったのか?鬼がいるならいてもおかしくは無いのかもしれないが・・・え?本当に天狗なのか?人だよな?
「わしは鱗滝左近次。水の呼吸を教えている。」
「あ、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。如月 啓です。どうぞよろしくお願いします。」
左近次さんと言うらしい。どうやら天狗の面を付けただけの人間だ。少し安心した。
「遠路はるばる良く来たな。とりあえず中で話をしよう。」
「はい。お邪魔します。」
小屋の中に入れてもらい、左近次さんに水の呼吸について話を聞く。
『水の呼吸』
その名の通りどんな形にもなれる水のように変幻自在な歩法が特徴。
どんな状況にも対応出来る性質上他の呼吸より型が多いようだ。
「と、起源や原理についてはこんなところだ。なにか質問はあるか?」
「いえ、特には。」
「そうか。さてそろそろわしの弟子達が帰ってくる頃合いだが・・・」
左近次さんがそう言った直後、小屋の扉が開かれる。
「ただいま戻りました鱗滝さん!」
「おぉお前たち、戻ったか。」
(多いな。)
今まで風の呼吸と雷の呼吸を学びに尋ねたのは今回と同様育手の元だったが弟子はそれぞれ一人だったはず。
対して左近次さんは三人。全員歳も近いように思える。
「あれ、知らない人がいる。鱗滝さんが昨日言ってた人?」
「そうだ。如月 啓。お前達と歳は近いが客人であることに変わりはない。失礼のないように。」
「如月 啓だ。皆よろしくな。」
「俺は錆兎。よろしく頼む。」
「私は真菰。よろしくねー。」
「・・・冨岡義勇。よろしく。」
錆兎に真菰、義勇だな。よし覚えた。
「ねーねー。啓はなんでここに来たの?鱗滝さんの弟子に?」
「いや、そうではない。実は〜」
各呼吸について学ぶために様々な所に行ってきたことを三人に教える。
「ということは啓は様々な呼吸が使えるのか。凄いな・・・」
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