ハーメルン
短編集
彼女達が見つけたもの

私、雪ノ下陽乃の世間様からの評価は「容姿端麗」「才色兼備」など褒めたたえる言葉で埋め尽くされることは想像に難くない。
なぜなら、私はあの雪ノ下建設の長女であり、県議会議員の娘である私に失敗は許されないのだ。
母から教育という名の地獄をその身にうけ、それでもと頑張ってきた私に残ったのは、自分の心を隠すための仮面と私の言うことに従う友達という名の奴隷だけ。
それなのに、彼女は全てを持っていた。
私の欲しかったもの、全部。

なのに、あの子は私の背中を追い続ける。
私と違って鎖につながれていないあの子はそれでも、私と同じ道を歩むのだ。
私が欲しいものを持って...

あの子が望めばすぐにでも飛びたてるのに、あの子は私と同じ籠の中から飛び立とうとしないのだ。

妬ましい、何度そう思ったことだろうか、進路が決められた高校生?いや、友達と思うように遊べなくなった中学生の頃だろうか...
もしかしたら、小学生、それともあの子が生まれた時かもしれない。
ずっと昔から私はあの子を妬んでいる。

だけど、私はあの子が嫌いなわけじゃない。
むしろ好きだ。私のたった一人の妹なのだから、嫌いなわけがない。
嫌いになれるわけがない。
妹の知り合いの彼も千葉の兄妹は仲がいいのがデフォだって言ってたしね。

だから、私は妹が妬ましくても大好きなのだ。

今までも彼女のためを思って行動してきた。
彼女のためなら何でも我慢できるつもりだった。

だけど、私にも彼女に譲れないものができてしまった。
譲れない人ができてしまった。
それが...

「だーかーらー雪乃ちゃん私に比企谷君を譲ってね♪」

「だめよ!!!絶対にダメ!!姉さんに比企谷君を渡すわけにはいかないわ。そもそも姉さんと比企谷君では釣り合わないのではないのかしら」

どんな状況だよ?と思ったそこのお前、それはお前らよりも俺が一番思ってるわ。
マジでどんな状況だよこれ?わけがわからないよ。
なんの変哲もない一軒家、両親が共働きで、かわいい妹の四人暮らし。
そんな一軒家には似つかわない二人の美女だけでも奇跡的な光景だというのに、それに加えてその美女二人が自宅の応接間でいがみ合うなんて光景を誰が想像できるだろうか。
しかも、それが自分の同級生とその姉であるなんて明日は槍が降ってくるんじゃないか心配になる。
そして、その同級生と姉の間に挟まれている俺はというと何度か彼女達の仲裁をしようと試みたものの、物の数分で姉妹からのダブルパンチという名の言葉のナイフを体中に滅多刺しされ、ダウン。
今は何とかこの場が落ち着くのを祈ることしかできない。
頼みの綱のかわいいかわいい我が妹の小町はニコニコ顔で反対側にすわって、一向に助ける気配がない。

そして、最後の登場人物が彼女達の母親である。
突然娘たちを連れて家に来たときは、家の娘に近づくな的な事とか、銚子の海に沈めに来ました的な事かと思ってインターフォンを覗いたときには冷汗が止まらず、居留守を使うことを決意していたところ、小町があっさり玄関を開けてしまい大魔王様御一行を我が家の平凡なリビングに通すことになってしまったわけだ。
そしてどういうわけか、彼女達の母親はソファに座り閉口一番にこう言ったのだ。

「比企谷八幡君今日は、あなたにお話しがあってお邪魔させていただきました。単刀直入ですが、家の娘と婚約してほしいのです。」

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