vsビークイン
サンタクロースを信じていたのは、果たして何時頃までだっただろう。
詳しい時期は覚えていない。それでも小学校低学年くらいまでは信じていた記憶がある。何故なら丁度その頃に、サンタクロースからのプレゼントという名目で、両親が私の枕元にポケットモンスターのゲームを置いていたからだ。
いわゆる第四世代と呼ばれる大ヒットしたその商品は、通信ケーブルが不要とのことですぐさま学校でも人気を博し、私の人生を左右するきっかけにもなった。
友達ができた。好きなポケモンが似通っているという理由だ。言葉にすれば、ただそれだけのこと。しかし、それが与えた影響は確かに私の人生を潤した。
一人の繋がりがもう一人を呼び、その一人が更に二人と繋がっている。友達は別売りなどと皮肉を込めて揶揄されることもあるが、それはつまり友達と遊ぶことを目的としたゲームでもあるということ。広がった輪は絆となり、絆は自然と笑顔を呼び込む。そのきっかけとなったゲームに、私がどっぷりハマってしまったのは無理もないことだろう。
『りんごちゃん、何それ〜あはははは』
『あ、でも私もなりたーい。デュエルキングの次くらいにね!』
『あかりちゃんも、それ無理だって〜』
『えー? でもゆうなもパイロットとか無理だってパパに聞いたよ〜?』
ただまあ、その頃はちょっと度が過ぎていたようにも思う。しかし、覚えはないだろうか。卒業アルバムかなんかで将来の夢を聞かれて、大真面目にピカチュウだのウルトラマンだのと書いていた同級生なんかを。
かくいう私もその一人だった。アニメやゲームにどっぷり影響されて、将来の夢を聞かれて真顔でポケモンマスターと答えるくらいには馬鹿だった。流石に中学に上がる頃には是正したが、それでもその願望を捨て切ることはできなかった。ポケモンというゲームそのものが、フィクションであると理解した上でこれである。我ながら馬鹿だとは思う。
だからこそ物心ついた時、自分がそんな世界にいることを知って、そんな世界が本当にあったのだと知って、私はそれで舞い上がった。かつて不可能だと諦めた夢が、ついに叶うのだと狂喜乱舞した。薔薇色の未来を信じて疑わなかった。
「……ポケモントレーナーになりたい? 何を言ってるの。なりたいも何も、貴女もうポケモン持ってるじゃない」
「え?」
丁度、今から8年前の話である。
☆☆☆
「リンゴさん。起きてください。リンゴさん」
「ん……?」
椅子に座ったまま器用に眠る彼女を揺り起こす。気持ち良さそうに眠っていたので出来れば起こしたくはなかったのだが、椅子から転げ落ちて怪我をする方が恐ろしい。
何せ彼女の体格は同年代でも二回りくらい劣っている。それでもキルクスのジムチャレンジを突破したのなら、やはりこんな心配は無用かもしれない。
「勝った……?」
「勝ちました。とはいえ、相性の面に助けられた部分は大きかったですが」
「そう……」
何せ私が闘ったのは彼女の助手をこなしていたタロウさんだ。彼も彼で私と同等かそれ以上の実力を持つのは明白なれど、流石に格闘タイプのエキスパートとしては、ダーテングやキテルグマには負けていられない。
いや、それでもかなり苦戦したと言っていい。というより、私はこれまでの闘いにおいて、その全てに苦戦しながら勝ち上がっている。
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