ハーメルン
オーシア連邦召喚
第19話「カイオスの怒り」

 
中央暦1639年6月30日 18時00分
クワ・トイネ公国 マイハーク市


 大東洋諸国会議――。

 それは第3文明圏東側の文明圏外国の大使らが集まる形で行われる国際会議である。参加国は文明圏外国のみで構成されており、第3文明圏の周辺で何かしら大きな出来事があった際に不定期的に開催される。

 元々、文明圏外国の提唱で開かれた会議であるため文明国などは不参加であり、参加国は文明圏外国のみとなっている。そのため国際会議にも関わらず、各国代表は自分たちの本音をオープンに打ち明けあうことが可能だった。


「それでは会議を始めます。本日の会議は最近現れた新興国オーシア連邦について、各国の認識を求めたいと思います」


 今回の会議にて進行役を務めるクワ・トイネ公国、その外務卿リンスイが会議の開催と会議の内容を宣言する。今回の会議の目玉は数ヶ月前に急遽現れ、影響力を増しつつある謎の新興国、オーシア連邦についてである。


「現在までに分かってるおおまかなオーシアの概要は次の通りです」


 各国の代表には、クワ・トイネの纏めたオーシアの概要を記した資料が渡されている。

・オーシアは大東洋に現れた新興国家。本人たちの言い分では、この世界に突如転移してきた転移国家とのこと。

・最初に国交を結んだのはクワ・トイネ公国であり、同国がロウリア王国と戦争状態に陥った際は公国側で参戦した。

・オーシアは未知の攻撃でロウリア軍の40万の軍勢、4300隻の軍船、飛竜400騎を無力化、開戦3日でロウリアを降伏させる。

・戦後、オーシアは第3文明圏内外の各国に接触を図り、国交を締結した各国に対して積極的な製品輸出やインフラ整備事業、資源開発事業を展開している。

・技術者らによると、オーシアの製品は列強ムーの機械製品と同じ仕組みであり、オーシアに派遣された外交官らは口を揃えて列強を越える文明をオーシアは有すると報告してる。

 あまりにも支離滅裂な内容であるが、これらすべてが本当であることに各国の代表は軽く目眩をおぼえる。なぜオーシアというメチャクチャな国がこんな近所にいきなり現れてきたのか、困惑するしかない。

 といっても大筋、オーシアの言うとおり他の世界から転移してきた国ということだろう。それも恐らくはこの世界で言うところの列強国に匹敵する国だ。そんな国がいきなり文明圏外の僻地に現れたとすれば辻褄は合う。


「では、各国の認識をお聞かせ願います」


 リンスイが発言を促すと、マオ王国の代表が早速挙手する。


「マオ王国代表です。我が国はオーシアを危険な国と思っている。彼らと我が国は国交はないが、あのロウリアを滅ぼした挙げ句、図々しくも各国に自分たちの製品を押し付け、資源開発まで行っているそうではないか。正直、今でも十分に図々しいのに、今後彼らが何をしでかすか分かったものではない」


 それを聞いた各国の代表は唸る。マオ王国の言うことはもっともだ。彼らとしては今後オーシアがどう動くか分からないし、パーパルディア皇国のような行動に出ないとも限らない。マオ王国に続いて次はトーパ王国代表が挙手する。


「トーパ王国代表です。我が国はオーシアをパーパルディアよりは良心的と考えます。少なくとも、オーシアは皇国のようにあからさまに我々を馬鹿にしてこない。経済的な観点から言えば強引なのは否めませんが、穏当に付き合えば下手に目をつけられることはないかと」

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