ハーメルン
せっかくバンドリの世界に転生したので全力で百合百合を眺めようと思ったら全員がノンケで絶望しました。
6.ツンデレ金髪ツインテールというパワーワード

 
 
「ゆり早く、あっちにもシールがあるよ」


 手を引かれて陽が傾き始めた道を早足で歩く。最初の頃に見せていた乗り気の無さは何処へやら、始めてしまえば香澄は夢中になって星の導きを手繰り寄せ始めてしまった。
 わたしの努力が報われた気がしてなんだか気分が良いや、それにとっても楽しそうに星のシールを探している笑顔がとても可愛いらしい、やっぱり香澄には笑顔が似合うよ。
 あともう少しで目的地の『市ヶ谷 有咲(いちがや ありさ)』邸に着く。
 これから起きる出会いは本当に大事だ、香澄達が組む事になるバンド『poppin'party(ポッピンパーティー)』は香澄と有咲、それに深紅の星型ギターが巡り合う事で始まった。
 だからこのイベントだけは、血反吐を吐こうが何があろうが絶対にクリアしないといけないのですよ。
 可憐な尊きの為にわたしは走り続ける、それが青春というものでしょ。
 意思を込めて香澄が握ってくれている手を強く握り返す、離れてしまわないように、見失ってしまわないように……。


「ここ、なのかな?」

「多分そうだと思う、星に導かれちゃったね」


 辿り着いた先には『流星堂』と書かれている古風な看板が掲げてあるお店、ここが有咲の実家で確か質屋さんだったと思う。
 そのままシールを追っていくとお店の裏手まで続いて、年季が入った和風の門がある所で途絶えていた。ちょうど開いていた門からこっそりと庭を覗くと、昔ながらの日本家屋と離れには立派な蔵が見える。事前に星のシールを確認してまわった時には門が閉まっていたから中を見るのは今日が初めてなんだよね。
 離れにある堂々とした蔵、ここでバンドを組んだ香澄達は練習を重ねたり、キャッキャウフフの尊い日常をおくったりする場所。言わば聖地であり、これは聖地巡礼の旅なのですよ。


「あっ、ゆりってば勝手に入ったら怒られるよ」


 不法侵入上等といった風情で敷地に入り、ずんずんと蔵を目指す。男の人だったら問答無用で通報されてしまいそうだけれど、可愛い女子高生達ならまず大丈夫でしょ。いやぁ本当に女の子って無敵で最強だわ。
 きょろきょろと辺りを確認しながら香澄がおそるおそる後に続いて敷地の中に足を踏み入れた。
 ちょっと不思議に思う。ゲームの香澄って良い意味でも悪い意味でも猪突猛進なキャラだと思っていたんだけれど、この世界の香澄はそれに比べると少し大人しくて女性っぽい気がする。香澄の行動力が未来を切り開く展開も多かったから、その辺りは気をつけておかないといけないのかもしれない。

 蔵はありがたい事に扉が開け放たれていた。
 いよいよだ、星型ヘアと共に香澄の代名詞とも言える深紅の星型ギター(ランダムスター)がここに眠っているはず。
 これからの出会いを予感して胸がふくらむ、まぁ実際に胸が膨らむ訳じゃないんですけどね、ショボーンですわ。


「あのー、すいませーん! 誰か居ませんかぁ!」



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