命の存在意義
友達。
その言葉を聞いて、真っ先に思い浮かんだのは一番の親友の顔。
私の陽だまり。
「……」
──深夜。闇は深く、ヒイロさんは私の横の布団ですーすーと息を立てて寝ている。
むくりと起き上がって、ジッとヒイロさんを見つめる。
「……」
友達……だもんね。
すすす、とベッドを抜け出して、ヒイロさんのすぐ横に横たわる。
「……」
と。私が布団に入ったその時。
ちょうどヒイロさんが寝返って、その寝顔が私のすぐ目の前に広がる。
「……」
眠っているヒイロさんはまるで子供みたいで……何時もの怖い顔の影も見えない。
そう、何時もヒイロさんの表情には影が差している。
眉間に皺を寄せた表情は視線だけで人を殺してしまいそうな程。
以前……私がこの部屋に来たときよりもずっと、その眉間の皺は無くなっているけど、それでもまだ険しい表情は崩れない。
「……っ……」
だから、ヒイロさんがこんなに安らかな表情を浮かべているのをこんな至近距離で見たのは初めてだった。
近い。そう、すごく近かった。
近い……ヒ、ヒイロさんの息遣いが……ち、近くに……。
「ぉ……おお……」
心拍数が果てしなく上がっていく。
顔は火照って火を噴きそうな程で、自分の鼓動の音がヒイロさんにまで届いてしまいそうな程。
「……」
未来と一緒に寝ていたときは、こんな風にはならなかった。
それでも、友達。私とヒイロさんは友達なんだ。
──友達なら、一緒の布団で寝るくらい普通だよね。
◇
「……」
朝目が覚めると、ヒイロの眼前には響のぐーすか眠っている表情が広がっていた。
ん? おかしいな。コイツはベッドで寝ているはずだが……?
「……夢かこれは?」
突拍子もない状況を理解できずにいると、響はううん……と、どこか艶めかしく寝返りを打った。
それもヒイロの方に。
ボスっと響の後頭部がヒイロの顔に激突する。
ヒイロが使っているシャンプーと同じはずだというのに、ふわりと良い匂いがする。
数瞬の間、呑気にその状況を堪能していたが……匂いをきちんと理解できているということに違和感を覚え──。
次第に寝惚けていた頭が覚醒していく。なぜならこれは夢では無く……現実であるということが判明したのだから。
「……んあ?」
「……」
そんなヒイロとは対比的に、響は寝惚けた声を上げてまたぐーすかと眠り始めた。
「……」
「ぐぅ……」
ヒイロは立ち上がり、眼下に広がる現状を認識する。
どこか乱れた掛け布団。寝転がり落ちたというには綺麗なベッド。そして幸せそうにしている響の表情。
……まさかこいつ……。
響きの表情を見て、ヒイロは状況を急速に理解していく。
「……」
ヒイロはすぅっと息を吸うと、その勢いのまま──。
「立花ァ!!!」
「うひゃあっ!?」
響を叩き起した。
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