第一局 始まり
いよいよプロ棋士の中でも、今後当たる人を中心に、「彼」に対する研究対策をする者も現れ始めたほどだ。
さらに、「彼」は局後のインタビューの対応もしっかりしていて、その謙虚な性格や「僥倖」「望外」といった知的な言い回しで、将棋を知らない一般の人からも人気を集め始めている。
俺が「彼」に注目しているのは、その目覚ましいまでの活躍を、最近不甲斐ない俺と比べて意識してしまっているから。…だけではなく、今後、対局相手として対策を練らねばならないかもしれないからだ。
ただ、将棋はどれだけ強い人でも連勝し続けるのは難しい。勝てば勝つほど強い相手と当たるし、人間である以上、疲れや体調、勘違いや見落としなどの要素が絡んでくる。
恐らく、この連勝による騒ぎもせいぜいあと一・二回くらいだろう。もし続いたとしても、シードがほとんどの俺との対局がすぐ組まれるような状況にはない。
「まあ、いずれにせよデビューの勢いもあるんだし、実力を見るとしたらもう少し待たないとだな。…そんなに慌てる必要はないか。」
そう、この頃にはまだ、その程度にしか思っていなかったのだ…。
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