初任務
最終選別を軽々と突破した白叡は、自分の日輪刀が出来上がるのを待っていた。その間の数日もひたすら鍛錬に打ち込んでいた。
今日も今日とて素振りに精を出していると、鴉の日和号が飛んできて嘴を開く。
「刀、来タヨ。白叡、来タヨ」
「……ん。そうかい、ありがとう日和号」
礼を言って首元を撫でてやれば、表情はよく分からないが喜んでいる雰囲気を出す。白叡は一先ず汗を拭いて木刀を片付け屋敷の玄関へ向かう。
白叡が玄関に到着すると同時に、戸の外から女性の声が聞こえた。
「ここが鉢特摩白叡の住まいで間違いないだろうか」
「あ、はい…………。あ、どうも俺が鉢特摩白叡です」
戸を開ければ腰まで伸びた長い黒髪を後ろで結び、ひょっとこの面を付けた女性が立っていた。身長は170代だろうか、やや高めで声からしても若く気高さを感じる。
「ふむ、君が……か。13歳と聞いていたが本当だったようだ。君の専属の鍛冶師となった鉄穴口銀閣だ。以後お見知りおきを…………」
「はい、よろしくお願いします」
「ふむふむ。あの阿呆の弟子と聞いたからどんな子かと思えば、中々好感の持てる子だな」
鉄穴口の言うあの阿呆とは、左右田のことを指すのだろうと分かったが、この人とも何かあったのだろうと思うと先が思いやられる。
そんな相手が誰かとも知らずにあの阿呆こと左右田が呑気に顔を出す。
「なんだ?玄関でうるせぇぞ……」
「…………」
「あ」
白叡を挟んで左右田と鉄穴口が互いをじっと見つめ合う。白叡はよく分からないが居た堪れない気持ちになり2人な顔を交互に見る。左右田は目に見えて動揺し顔に大粒の汗をかく。対する鉄穴口は刃物の様に鋭く無機質な目で睨めつける。
「よ、よぉ銀閣。久しぶりだなー」
「…………ふん、お前は相変わらず間抜けな顔をしているな」
急に辛辣な発言に左右田は表情をピクピクと震わせ、鉄穴口は鼻で笑うと白叡の袖を引いて勝手に屋敷に上がる。
「え?あ、ちょ……」
「さあさあ、こんな無駄話より君の刀の話をしよう」
「おい!俺家主!この屋敷の家主!!」
左右田の怒鳴り声すら無視して、鉄穴口は慣れたように中庭に続く大部屋へ白叡を引っ張っていく。まるで屋敷の構造を把握しているかのような迷いの無い足取りに、白叡は彼女と左右田の関係性に疑問を持つ。
だがそんなことなど知らないと言うように部屋に入れば、戸を閉め早速本題に入る。
「早速だが、これは君が最終選別後に選んだ石から私が鍛えた日輪刀だ。この世で唯一鬼を狩ることの出来る武器……、まあこんなことは既に知っているだろうからいいか。さてさて、早く君の刀を抜きたまえ」
「あ、はい……」
饒舌に話す彼女はスっと鞘に納められた刀を渡す。
「さあ、君の刀はどんな色に変わるのか見せてくれ」
「色が変わる?」
「日輪刀は又の名を色変わりの刀とも呼ばれている。持ち主によって色が変わり、色事に特性が異なる。因みにそこでコソコソしている阿呆の色は白だ」
「コソコソしてねぇよ。どこに目ェつけてんだ」
「君の弟子の刀のお披露目だ。黙ってそこで首を吊りなさい」
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