ハーメルン
蒼き鋼と鋼鉄のアルペジオ Cadenza
航海日記28 水面下の偵察

 イ403はイ501と共に、自身の船体を駆使して、硫黄島からフィリピン・インドネシア方面に向かっていた。薄黄色のカラーリングを反射した潜特型の船体は、ジェット推進を行いながら急速に目的地へと接近する。

 既に南洋諸島の戦線はパプアニューギニア方面まで後退しており、増え続ける異邦艦隊の数に圧倒されている状況らしい。

 異邦艦に対して霧の艦隊は火力、防御力、速力と全ての面で圧倒する。しかし、侵蝕魚雷を始めとした弾薬が底をつくと、増援が殲滅能力を上回って、後方まで下がらなければならない状況だ。

 配備されていた大戦艦が超重力砲で薙ぎ払っても、怯まずに突進してくるというものだから。敵艦隊の性質の悪さは、他を圧倒しているとも言っていい。犠牲を顧みない敵の強硬進軍のせいで、何度も戦線を引き直している。

 もちろん、敵の通常艦艇に負けるほど霧も弱くはない。
 通常であれば、弾薬が底を尽きても、光学兵器だけで相手を制圧することぐらい造作もないのだから。

 なら、押されている理由はなんなのか。
 それは、敵の超兵器にあるらしかった。

 オーストラリア方面に配備されていた霧の巡洋艦隊の話では、戦線に投入される敵の超兵器が原因で、被害が拡大する前に下がらざるを得ない状況らしい。
 敵は島を越えて奇襲を行い。時には列島の山越しに砲撃を加えることで、艦隊にダメージを蓄積させ、追いつめてくる。
 反撃しようにも、複数の超兵器が相手では、現状の戦力を持っても太刀打ちできない。攻撃力が足りないのだ。

 現状ではアングルドデッキを備えた空母型の超兵器。
 小島程度の陸地を軽々と乗り越えて奇襲を行うホバー型戦艦の超兵器。
 それらを支える複数の量産型超兵器戦艦の姿が確認されている。

 そこで一旦戦線を引き直し、味方の増援を待って、一気に反撃を行う。
 異邦艦隊が伸ばした戦線の隙を付き、超兵器同士の連携を分断することで、こちらも各個撃破を狙う。
 敵の戦闘にいちいち付き合っていては、ジリ貧になるだけだ。

 よって霧の艦隊は、攻勢に出る前の偵察行動が必要になった。
 敵の超兵器や補給艦の位置を捕捉し、戦術ネットワークにリアルタイムで状況を反映する。
 そして、その情報を元に、作戦を立て、攻撃を行い。複数の艦隊が目標の撃破を目指す。

 問題は偵察を行う役だが……人間を乗せ、優れた能力を発揮するイオナの船体は、超攻撃型潜水艦に改装しているので、同型艦よりも索敵能力に劣ってしまっている。

 その代わりに派遣されたのが403だ。
 彼女は超が付く索敵と情報処理に優れ、400や402以上の能力を発揮する防御重視の潜水艦。
 コアの経験を除けば、今回の任務に最適である。
 低い経験値は、501のフォローでサポートすれば問題ない。

"まもなく目標海域に接近"
「確認。方針変更。索敵行動を密にする」
"Jawohl(了解)。索敵範囲及び精度を密にします"
 
 演算補助を与えられ、自らの躯体(メンタルモデル)を持っていた501。

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