航海日記3 指令
淡い翡翠色の船体を持つイ402。
淡い黄色の船体を持つイ403。
色の違い以外はまったくの同型艦である二隻だった。
超戦艦『大和』と接触しないように離れた場所から浮上した二隻だが、艦の側面に設けられた補助推進を自在にコントロールして徐々に近づいてくる。
やがて、港に停泊する時のように側面の推進装置を噴射。それを制御しながら『大和』に隣接した。
順番的に『大和』の隣に402が並び、その隣に403が続く形。
そうして二隻の潜水艦のセイルからハッチを開けて現れたのは、小柄な少女の形をした402と403のメンタルモデル。
二人並んで歩けば誰もが双子だと思うであろう、瓜二つの姿をした少女達。
彼女達はタラップも展開せずに軽々と跳びあがると、大和の甲板に降り立ってみせた。
それを出迎えるのは同じく、艦橋からふわりと飛び降りたヤマトとコトノの二人だ。
「ただ今戻りました。総旗艦」
「おかえりなさい、402。その子が例の?」
「はい、途中でアクシデントもありましたが、指示された通り連れてきました。おい403、総旗艦に挨拶しろ」
ヤマトの問い掛けに応える402。
敬礼はしないまでも、いつもより丁寧な口調で喋り、接していて。
そこからヤマトは402にとっての上司に当たる存在だと理解できる光景。
だが、403は不思議そうに首を傾げるだけで、挨拶する素振りも見せない。
それどころかじっと、ヤマトの姿を眺めているだけだった。
それに402は冷や汗を流す。
403を観察していて分かったことだが、彼女は好奇心を刺激されると首を傾げる癖があるのだ。興味を持ったとも言う。
こうなると命令に沿って行動していても、余裕があれば脇道に逸れ始めてしまう。
何よりも総旗艦の手前。失礼な態度はあまり見せるべきではなかった。
「403! 総旗艦の前だぞ。到着前にあれほどちゃんとしろと言い聞かせておいたのに、お前という奴は――」
「いいえ、構いませんよ402。私は気にしておりませんから」
「ですが、総旗艦。これでは他の艦に示しがつきません」
「いいんじゃない? 私の指揮下にある巡洋艦隊の子達だって一癖も、二癖もあるのよ? そんな連中に比べたら、この子の態度は大人しい方だわ」
「コトノ様……」
尚も真面目にあろうとする402に対して、時間の無駄だからやめようと遠回しに伝えるコトノ。
彼女は興味深そうにゆっくりと403に近寄ると、自分よりも小さな両手をそっと掴みあげた。
403も何も言わずにじっとコトノを見つめている。
「ふふ、見れば見るほど不思議な子ね。403。
貴女は何処から来て、何処へ行こうというのかしら?」
意味深なコトノの問い掛け。
「対象。超戦艦。コトノ。ヤマト。分析中。二人の形状に差異は見受けられないが、精神構造は異なる模様。あえて違うように振る舞っている? しかし、当艦と比べて胸部性能の差は圧倒的であると判断。人間の異性から見た場合の武器と思われる。色仕掛けによる魅惑の効果あり」
それに対しての返答はやっぱりどこかずれていて、403は分析の結果を淡々と口にしていた。
口から漏れ出るのは自分と大和のメンタルモデル二人の、胸の差が圧倒的であるという呟き。
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