航海日記8 義妹
403は困惑していた。
タカオが武装をロックされて外洋へ退避させられたのち、401は無理に大戦艦級の超重力砲を使った影響なのか、付近の海底で修理に勤しんだ。
問題なのは、401が修理を終えて横須賀港に向かった後だ。
403は演算の過負荷による熱を冷まし、システムの最適化を済ませて、超重力砲の直撃から助けた501のコアを探していた。
そこで探索に手間取ったという訳ではない。
霧の潜水艦隊は元々諜報を主任務とする故に、情報処理に特化した艦が多い。
潜水艦の中でも最高クラスの性能を持ち、メンタルモデルを持つに至ったイ400型の潜水艦ともなれば、広大な海域であっても探索するのは容易。
人間の手のひら程しかないユニオンコア。海からすれば微小な探索物であるそれを見つけるなど造作もなかった。
401の索敵範囲外から艦装を展開し、海底地形の情報から海流の流れ、海中の温度、生息する海洋生物の種類から数まで微細に分別して探知する403。
501のコアはすぐに見つかった。
超重力砲の余波でナノマテリアルで生成した外郭が剥がれていたが、コアは傷一つなく無事だったのだ。
403は海底の砂に埋もれていた501のコアを、船外アームを使ってすぐに船内に収容した。
ここまでは良かった。
そこから機能停止していた501のコアを再起動させようとした時。
突然、膨大な演算処理が発生し、403に搭載されたコアの原因不明な暴走を起こした。
そうして気が付けば目の前に見知らぬメンタルモデルがいたのだ。
身長や体格は幼く、403よりも頭二つ分小さいくらいの女の子。
高校生用のサイズなのか大きさの合っていない真っ黒な水兵服(セーラー服?)はダボダボで、両腕は長そでの半分くらいしか通せてない。
その様は、まるでワンピースでも着込んでいるかのようだった。そして裾が足りないのか、スパッツが少しだけチラ見している。
顔つきは欧州人に似ていて、蒼玉のような瞳に、黒交じりの金髪を肩のあたりまで伸ばしているようだ。
頭の上にはトレードマークなのか黒い軍帽。
それはパッと見、ドイツの潜水艦隊が着こんでいた軍服に見えなくもない。
袖越しに握られたその手には、大きさの合わない黒のズボンが握られていて。
足元にも大きさの合わない軍靴が、ブーツが置かれていた。
いや、とりあえず目前にいる小さな女の子が、501のメンタルモデルだというのは分かる。
分かるのだが、重巡以上の処理能力を持たない潜航型観測艦の501が、どうして躯体を実装しているのだろう。
「……おはよう?」
とりあえず、403は疑問符を浮かべながら挨拶してみた。
「あっ、Guten Morgen! Schwester403!」
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