ハーメルン
蒼き鋼と鋼鉄のアルペジオ Cadenza
航海日記8 義妹


 そしたら可愛らしい元気な声で挨拶を返された。しかもドイツ語で。
 さらに、403はいつの間にか501のお姉ちゃんらしい。

「疑問。姉妹艦じゃない貴女が、どうして私の妹になるのか?」
Ja.(はい)お姉ちゃんは501の命の恩人だもん。とーぜんだよ?」

 詳しく理由を聞いてみると。
 401との戦闘において撃沈されそうになり、思考が停止するかのような恐怖を味わったこと。
 そこから慕っていたタカオのお姉ちゃんと引き離され、急に暗い海の底に放り出されて、動く事も儘ならないまま独りぼっちで取り残されたこと。
 もうこのまま、ずっと独りなのかと不安になっていた所を、助けに現れた救世主のような潜水艦が現れて。
 それがイ号403の事らしい。

 501は喋り慣れてないのか、ちょっと舌っ足らずな日本語で説明してくれた。

 薄いの黄色の船体と相まって、403が登場した時は希望の光そのものに見えたらしく。
 しかも、相手は自分のような矮小な潜水艦よりも立派な400型の巡航潜水艦である。
 もう憧れと尊敬と感謝の気持ちで感極まって、403を姉と呼び慕う事にしたらしい。

「だからね、403は501のお姉ちゃんです! Danke!(ありがとう!) Danke!(ありがとう!)

 感情シュミレーターが感極まっているのか、403の手を握って感謝の気持ちをストレートにぶつけてくる501。
 その瞳はキラキラと輝いていて、心なしか潤んでいるようにも見える。
 無表情、無感情な400型と違って感受性豊かな子のようだ。

「ん、気にしなくていい。わたしが501を助けたいと思っただけ」

 だが、403は一度は任務の為に501を切り捨てようかと考えたこともあるし、そんなに感謝される資格はない。
 そんな風に考えて、どこか淡々と。お前を助けたのは只の気まぐれだと告げてやる。
 403は501が思っている程、尊敬に値する存在でもないのだから、これで少しは距離が取れるだろうと期待しての発言。

Schwester(お姉ちゃん)……Ich liebe dich501!(501はもう、とっても大好きです!)
「ぐえっ!?」

 と思ったのが、さらに感極まった501が、手にしたズボンを放り投げて抱き付いて来た。
 おまけに幼い子供がするように頭から突っ込んでくるものだから、403の鳩尾。コアが収まっている部分に直撃である。
 ちょっと痛い……けれど、しがみ付く501に好きにさせる。

「ん……まあ、仕方ない」
「えへへ~~♪」

 よしよしと、背中をあやしてやれば、本当に幼い子供のように嬉しそうにする501。
 403も姉妹にこうして甘えてみたい願望はあるし、501の行動が分からないでもない。

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