ハーメルン
その瞳に希望を宿して
第12話


「はぁ……仕方ないか」

そう言い、私は黙々と作業を続けていた。
しばらくすると、気持ちよさそうなクルースの寝息が、私の執務室のソファから聞こえ始め、微笑ましくなっていた。
その後またしばらくして書類を作り終え、私は自由な時間を手に入れた。
とは言ってもやりたいことは特にないし、今日の分の研究はもう終わってしまっている。
今から少し研究を進めたところで、気がついたら夜中になってしまっているのがオチだろう。
アーミヤからはしっかりとした時間に寝るようにと厳しく言われたので、たまにはその言いつけを守ってやらねばアーミヤが可哀想だ。

なら少し読書でもしようと思い、執務室にある蔵書を少し引っ張り出して読むことにした。
読みふけっているとすぐに食事の時間になり、私はクルースを起こして、食堂へ向かった。

時間も時間とあってか、食堂には沢山のロドスに関わっている人々で溢れかえっていた。
ロドスの戦闘オペレーターや非戦闘員のオペレーターに感染者の患者たち、ロドスのオペレーターでなくとも様々な業務を行ってくれている人々や、ロドスの研究者たち。
このたくさんの人々が支え合って、このロドスができている。
ロドスは色々な人々に色々なことをやらせているブラック企業だと言う人もいるが、各々の能力よりも高い物事はやらせてはいない。
子供ならば折り紙を折ってオペレーターに渡したりすることでも、オペレーターやロドスにとってメリットになるなら、それをしてくれるだけでも構わない。
そんな事がはっきりと疑問や不信感から確信や安心へと変えてくれるのがこの食堂だ。

「さて…何を食べようか」

そう言いながら、私は今日のメニューの書かれたモニターを見ていた。
様々な出身地や食の趣向に合わせた料理が並んでいる中、私はウルサス風ビーフストロガノフのセットを注文し、カウンターで渡されるのを待っていた。
そこに注文を終えたクルースが合流し、私たちは雑談しながら待つことにした。

「ドクターはぁ、晩御飯なににしたの?」

「ウルサス風ビーフストロガノフのセットだ、クルースは?」

「私はぁ、サラダのセットにしたんだぁ、ちょっと高かったけど、デザートにリンゴスムージーつけたのぉ〜」

「ほう、そんなのもあったのか…私もつければ良かったかな」

「そんなこと言ってもぉ、私のはあげないからねぇ〜♪」

そんな会話を交わしていると、注文した料理を、食堂の料理人が持ってきてくれた。

「あ!ドクター!グムの料理、注文してくれてありがとう!」

「やっぱり、グムの担当だったか。注文して良かったよ、美味しくいただくとしよう」

「えへへ、ありがとう、じゃあグム、まだ仕事残ってるから戻るね!」

「ああ、頑張ってくれ、無理のないようにな」

「うん!」

そうグムは満面の笑みで厨房へと戻り、再度料理を再開した。

「さて…頂くとしよう」

そう席に座り、周りのオペレーターと楽しく会話しながら、私は晩御飯の一時を過ごした。

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