ハーメルン
ミジンコの俺がラスボス級悪役お嬢様とベストエンドを迎える方法
妄想
ホームルームの時間となり、課外授業の班決めが始まった。事前に約束を取り付けていた黒原さんたちと合流する。
「早速だけど、リーダーを決めておいてもらっていいかしら?」
「黒原さんは委員長としての仕事があるから、他のメンバーからだよね?」
「そうなの、ごめんね。リーダーの人は事前に研修みたいな集まりがあるから、そのつもりでね。あ、私もそれには参加するから」
そう言って、まだ班決めの終わっていないクラスメイトたちの方へと黒原さんは歩いていった。
見た所、男子も女子も三人組は出来ているみたいだから、後は男女の組み合わせか。
一番人気だったはずの黒原さんが、すでに俺たちと組んでしまっている。
男性陣からの恨めし気な視線を感じるが、こういう時は早い者勝ちだろう。とりあえず郷田、呪詛代わりに唱えているお経をやめろ。
周りの目が気になるお年頃の男性陣よりも、やはり積極性と行動力に優れる女性陣の方が先に動いた。どちらかから先に声を掛ければ、案外早く決まるものだ。
ああいった所を見ると、女性の頼もしさというか、
強
(
したた
)
かさを感じずにはいられない。一組決まれば残りもすんなりと決まっていく。
さて、こっちも話を進めるか。
「そんじゃ佐藤さん、中町さん、それと八幡。リーダーは任せてもらっていいかな?」
「えっ、いいの? うちらは――うん、いいよ。お願いね」
顔を見合わせた三人が頷いて、快く了解してもらえた。次に新司へと顔を向け、視線を合わせて一つ頷く。
「光太、悪いね」
「いや、気にすんな。任せたぞ、新司」
「「「えっ」」」
肩に置かれた手と、良い笑みを浮かべているだろう俺の顔を新司が唖然とした顔で交互に見る。
「えっ?! 僕がやるの?」
「やらないか? 新司は、この学校での思い出が俺らより一年分少ないからな。一つでも多く詰め込んでほしいんだ」
「光太……」
「勿論、必要な時は協力するからな。遠慮せず何でも言えよ」
「うんうん、片泰君、私たちも協力するよ」
「わかった。ありがとう、よろしくね」
よしよし、計画通り新司をリーダーにする事が出来た。これでリーダー研修とやらで黒原さんと接する機会も増えるだろう。俺の絶妙なアシストを活かして好感度をゲットしてくれ。
何だ? 何か前の方が騒がしいような――そちらの方へと目を向けると、ドアの付近で数人の女子生徒がしゃがみ込んで床を拭いているのが見えた。
「はい、それでふぁ、きょふのじゅぎょふご、りーだーのひとふぁ、きょふしつにのほってくらさい」
無事? 班決めの終わったホームルームの時間は、クラス委員長である黒原さんの言葉で締められた。
普通なら、鼻にティッシュペーパーを詰め込んだ状態で真面目な顔をしても締まらない。それがああも見事な造形美になるのだから、やはり美人は得と言える。
「そんじゃ新司、よろしくな」
「うん、任せといて。また明日」
リーダー研修に参加する新司にエールを送り、教室を出る。
学業から解放され自由の身となったはずだが、重力がおかしな事になってるんじゃないかと思うくらい体が重い。
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