ハーメルン
ミジンコの俺がラスボス級悪役お嬢様とベストエンドを迎える方法
あぁっ駄女神さまっ

(なんだ? それに今の……あからさまに舌打ちしやがったな)

 呼んでおきながら目の前で迷いだすバカップルに、見事なアルカイックスマイルで応対したウェイトレスさんが、厨房に通すオーダーのようなやさぐれ感。そう例えれば伝わるだろうか。

『舌打ちなんてしていませんー。噛んだだけですー。失礼、噛みまみた』

(こいつ……なんつーイラっとする喋り方だ。しかも最後のワザとだろ)

『なんかとんでもなく失礼な人間ね。女神である私に向かって、こいつ呼ばわりとかありえないんですけど?』

(あぁ、俺が考えた事がわかるのか。女神というのもまんざら嘘じゃなさそうだな)

『だから女神だって言ってるでしょ。引きこもりのあなたを、この世界に導いてあげたんだから』

(人の都合も聞かずにな。俺としては、ありがたいと感謝してもいいんだが……)

【導く】とは【正しい方向に手引きする】という意味だと理解していたが、これ手引きってレベルじゃないだろ。もう完全に拉致監禁しちゃってるよね、魂レベルでさ。
 ちなみに【導く】には、男女の間を仲介するなんて意味もあったりする。出来ればそちらの方でお願いしたい。この女神以外で。
 
『そうよ、もっと感謝して(あが)めなさい。引きこもりでダメ人間なあなたでも、私の役に立てるんだから』

 引きこもりだったのは否定しないが、それだけでダメ人間と断定するのはいかがなものか。

(俺が役に立つ? 魔王でも倒せばいいのか?)

『魔王? そんなのここにいないけど? そもそも何の取柄もない平和ボケした高校生なんか、ゴブリン相手でもフルボッコにされておしまいよ? 夢見すぎ』

(知ってる)

『まぁ、いいわ。それでは発表します! プレイヤーキャラであるこの世界の主人公を攻略対象と結びつけてベストエンドを迎えさせる。それが、あなたに課せられた使命よ! もちろんグッドエンドではダメ、バッドエンドなんて論外よ』

(発表します! なんて仰々しく言っておいて、それって使命という程のものか? 放っておいても頑張る主人公が、挫けそうになったり迷った時なんかに、励ましたりアドバイスをしてやるくらいが役目だろ?)

『あなたバカなの? いえ、バカね。主人公が頑張ってる姿を見てても、私が面白くないじゃない』

(えっと、なに言ってんの?)

『だからー、シナリオを知ってる女神の私は、飽きちゃったの』

 いきなり人をバカ認定しといて、その後に続けた理由の意味がわからない。頑張ってる人を見守るのが神様じゃないの? この歳になれば、見守るだけで手助けしない事は知っている。願えば叶うなら、俺は今ここにいないのだから。 

『そこであなたたちの出番ってわけよ。主人公と違って選択肢に縛られないあなたがどんな行動をとるのか、必死に右往左往する姿を見て私は楽しみたいってこと』

(要は暇潰しに付き合えってことか。なんつー女神様だ。付き合ってられねぇ。俺は自由に過ごさせてもらうわ)

『ぶっぶぅー。ほんと、おバカちゃんでちゅねー。この世界で自由に過ごせるわけないでしょ』

(……どういう事だ?)


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