ハーメルン
ミジンコの俺がラスボス級悪役お嬢様とベストエンドを迎える方法
この中に一人、主人公がいる
「……ぃに、にぃにってば、間に合わなくなっちゃうよ」
「ぅうう、良いんだよ、学校なんて行かないんだから」
「みゃあは、ちゃんと起こしたからね、もう知らないっ! バカにぃにっ!!」
バタンッ……トントントントン……ガチャ、「行ってきまーす」
ふぅ、ようやく静かになった。なんなんだよ、まったく。もう一度寝よ。
……あぁ、そうだった。【アマガミッ!】に似たゲームの世界に取り込まれたんだった。
――このデジャヴ感、主人公がバッドエンドを迎えてリスタートが掛かったって事か。まだ一日目が終わってなかったはず……初日でバッドエンドって、ゲーム難度がウルトラハード過ぎるだろ。なんつークソゲー。
しかも女神の言っていた事が本当なら、これでリアルの記憶がランダムで消されたって事か。何の記憶を消されたのか。一番消えてほしい記憶が消えていない事だけはハッキリしている。思ったとおり役に立たない女神だ。
どのみち記憶が一個や二個消えたところで、どうという事はない。ゲームの方も【アマガミッ!】をやり込んだ俺が本気を出せば、結構簡単にクリアしてしまう可能性すらある。この二次元恋愛マスターこと竹原 光太様が、主人公をリア充に導いてやりますか。
鼻歌まじりに制服に着替えると、悠々と学校に向かった。
掲示板の前で、結構な人数が人垣を作ってワイワイと楽しそうにやっている。今更見る必要のない俺は、少し離れてその様子を眺めていた。なんとなくここに足が向いたのだが、これが女神が言っていたシナリオの強制力というやつだろうか。こじつけ気味にそんな事を考えていたら――
「これ、落ちてるけど君のかな?」
「あぁ、悪い。俺のだ、ありがとうな」
「どういたしまして」
前回もハンカチを拾ってくれた見た目は普通の……名前なんだっけ? 同じクラスだし、また自己紹介の時に覚えればいいか。そんな失礼な事を考えながら、颯爽と去っていくクラスメイトAを見送った。
ギリギリ着いた前回と違って、教室に向かう途中で何人にも声をかけられた。男どもだけでなく女生徒からもだ。それも同級生に限らず、上級生や中学の後輩だったという下級生からも。どうやら俺は、驚きのリア充だったようだ。
前回でわかっていた事だが、設定上の知り合いは会話をするとそのキャラ情報がすっと頭に浮かんできて、既知の情報として記憶に定着する。その情報から小学生以来の親友とわかる奴が何人もいた。こういったゲームのお助けキャラと主人公は小学生からの親友であり、同じクラスというのが定番だ。
名前を【ああああ】だとか【厨二 やまい】みたいに、いかにもプレイヤーですって名前を付けてくれていれば一発なんだが、特におかしな名前の奴はいなかった。取得したキャラ情報からも、今の所どいつが主人公なのかわからない。
まだ出会っていないということなのか、あるいは、何かイベントでも起きるのだろうか。そんな事を考えながら始業式を過ごしていたら、あっと言う間に自己紹介まで時間が進んでいた。
「片泰新司です。親の転勤でこの春からこちらに戻ってきました」
あぁ、あいつか。今度は、ちゃんと覚えておいてやらないとな。そうは言っても特徴がないんだよなぁ、普通過ぎて。
「好きな食べ物はメロンパンで、手のふさがっている状態で無理やり口に押し込まれるのがたまりません」
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